建築構造設計業界で活躍する女性技術者

平成29年8月10日

 2017年第12回 日本構造デザイン賞が発表されました。 2015年の桝田洋子氏(桃李舎)に続き、女性構造設計者である加登美喜子氏(日建設計)の作品が授賞しました。

熊本かがやきの森支援学校 受賞作品:熊本県立熊本かがやきの森支援学校
構造規模:地上1階/構造 木造・鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
建築面積: 6,821.42㎡、延床面積: 6,184.74㎡


 2015年8月、女性管理職の割合に数値目標を義務づける「女性活躍推進法」が可決され、成立しました。それ以来、各企業、国や自治体などが女性管理職を増やす取り組みをしています。 防衛大臣に先日、辞任した女性大臣を登用するなど。。。構造設計業界においても、大成建設では構造設計部門のトップに女性である鈴木裕美氏が登用されています。 その他、ゼネコン、ハウスマーカー、設計事務所においても“女性構造設計者”が活躍する姿がインターネット等で紹介されています。また、女性で構造設計事務所を主催している方も居ます。



有限会社 桃李舎 一級建築士事務所

日本を代表する女性構造家の桝田洋子氏が主催する構造設計事務所です。2015年、行橋の住宅(JUUL House)で日本構造デザイン賞を受賞しています。
≪その他、桝田洋子氏の業績≫
2006年 JSCA賞作品賞「西有田タウンセンター」
2017年 日本建築学会作品選奨「春日の住宅」


株式会社 武設計 一級建築士事務所

武居由紀子氏が代表を務める2006年に設立された構造設計事務所です。スタッフは全員女性です。一般構造設計から免震構造までの実績があります。
≪武設計に関する記事≫
けんせつPlaza「知られざる建築IT女子の世界」
ユニオンシステムユーザーインタビュー

株式会社 ビルド総合設計

谷口規子氏が代表を務める熊本県宇土市にある構造設計事務所です。谷口氏が構造設計を自分の業務の柱にもってくる事になった切っ掛けは、 インドで起こった地震の被害調査団の一人として現地に行き、瓦礫の山を歩き、自然の脅威、人間の力の限界、人の優しさを肌で感じた日々の中で、 構造設計がいかに大事であることか痛感した事だそうです。


ユリノ構造株式会社

鳴松信子氏が代表のスタッフは全て女性の構造設計事務所です。女性の社会進出・キャリア形成を支援することで、仕事と家庭が両立できるよう 取り組んでいます。
≪ユリノ構造株式会社の取り組み≫
・結婚・出産などで一時休職した後の、復職体制の整備を行います。
・プライベートを充実させるための時間限定勤務や、始業・就業時間を柔軟に運用します。
・オフィスに出勤することが難しい状況になっても働いていけるような在宅勤務を導入します。

 さて、他の業界と比べると構造設計業界における女性の進出はどうでしょうか?ハウスメーカー、ゼネコンなどにおける女性管理職の割合は 増えているのでしょうか?私の廻りにも女性の構造設計者は多数、居ますが、女性管理職と言うのは殆ど見掛けません。これは構造設計業界が 遅れていると言う事ではなく、ハウスメーカー、ゼネコンでは構造設計の部署は人数の少ない部署であるため、女性管理職を登用するほどの枠 が無いと言うのが実情と思います。

 また、メーカー、サービス業などでは、「女性目線の商品」、「女性視線の細やかなサービス」などと言われるものがありますが、構造設計には 、あるでしょうか?構造設計に必要なのは、『安全、経済性、デザイン性、施工性』などであり、“女性だから出来る構造設計”などはありません。

 残念ながら、日本構造デザイン賞には女性を選考するなどの目標はありません。実力、実績のみの評価です。作品を見れば明らかです。また、 構造設計事務所においても女性が経営しているから、受注が増えるなどはありません。ここも実力だけが勝負です。
 構造設計業界は女性に優しくない業界なのかと言うとそんな事はありません。女性でも実力、センスがあれば男性との差はありません。皆さんの 廻りにも女性構造設計者がいると思いますが、女性だから、技術力が低いなどは感じた事はないと思います。
 構造設計業界は実力とセンスさえあれば、男女の差は全くありません。女性でも十分に活躍できる業界です。男性も同じですが、構造設計で成功 するとは何も各種賞を受賞する、構造設計事務所を設立するという事だけではありません。企業、事務所に所属し、多くの建物を設計する事も成功です。

 しかし、女性には結婚、出産、子育て等、男性に比べ、時間的はハンディがあるのは事実です。女性の社会進出・キャリア形成を支援する事は 必要であり、労働時間や在宅勤務など企業や事務所による支援は必要です。そのような意味では先に紹介した設計事務所は良い構造物を作る事と 同じくらい意義のある事務所と思います。

 女性の社会進出を支援する事は何も女性のためだけではありません。他の業界と同じく、構造設計業界、建築業界も人手不足、高齢化が進んでいます。この先も 構造設計業界が繁栄するには女性の協力なくしてありません。女性が働きやすい環境を作る事は業界全体の利益に繋がります。

 この人手不足、高齢化は直面している問題であり、早期に解決する必要があります。そのためには即戦力の人材を確保することです。効果的なのは結婚、出産、子育てで 一度、仕事から離れた女性構造設計者を活用する事です。
 ここで時間的な制約以外のもう一つの問題は、“ブランク”を取り戻せるかと言う事ですが、10年前と今を比べてみて、構造設計業界は多少の設計基準の変化はありますが、 基本的な設計方法は変わっていません。残念ですが、ある意味、成熟している建築構造の分野は技術的な進歩はそれほどしていません。つまり、基本技術を身に付けている人は 復帰がしやすい業界です。
 ぜひ、子育てに一段落した女性構造設計者には復帰をしてもらいたいと願います。

 また、企業側、事務所側も在宅による勤務など積極的にこのような女性が働ける機会を作らないと業務をこなせなくなります。構造設計の作業はパソコン一台があれば、 何とかなったりします。小さい子供が居るママさんでも自宅で仕事をすることも十分可能です。
 実際に私が仕事で付き合っている方でこのように仕事をしている方も居ます。電話をするとたまに子供が出たり(笑)ぜひ、ママさん構造設計者にも活躍してもらいたいです。