〜誰にも話せない構造設計の失敗談。関係者の皆さんゴメンナサイ。 | |
指針の間違い
擁壁の工作物申請をした時の事です。行政より、『土圧係数の算定式が
間違っている。』との指摘が挙がってきました。土圧係数については
建築学会の基礎構造設計指針に従って検討をしており、再度確認をした所
やはり、間違ってはいなく、行政に電話をしました。 私: 「土圧係数の算定式が間違っているとの事ですが、建築 学会の基礎構造設計指針の式を使って算定しています。 再度確認しましたが、間違ってはいません。」 行政:「私も同じ本を見ていますが、違っていますよ。」 違っている、違っていないと問答を繰り返しているうちに『何年版の指針を見ていますか?』 との話になった。お互い確認した所、出版年度は同じである。次に第何版かを確認した所、 私の持っている方が古いものでありました。 いやな予感がし、他の擁壁関係の指針を確認した所、何と学会指針が間違っていたので ありました。申請の方は計算書を訂正することだけで済みましたが、危ない所でした。 日本建築学会のホームページに正誤表が出ていますので皆さんもご確認を。 http://www.aij.or.jp/aijhomej.htm |
新構造設計基準
鉄骨造3階建ての某ショッピングセンターの仕事を受注した時の事です。
VE案で鉄骨部材の見直し(コストダウン)を行う事になり、その作業の
担当を私が行いました。
鉄骨部材を見直し、変更申請を出しましたが、工事もかなりの突貫工事 の現場であったため、変更許可が下りる前に鉄骨のロール発注をするとの 事になりました。 「鉄骨を発注するが大丈夫か?」と言われ、「ダメです。」とも言える ような状況では無く、OKをしてしまいしまた。 その後、審査が進み、『柱梁の耐力比は、満足しているか?』との聞き なれない指摘が上がってきました。なんの事か行政に問合せをしてみた所、 『冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル』の規定に従っているかと言う 事だった。 その当時は『冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル』が出た直後であり、 私もちらっと目を通した程度であった。一般にもほとんど運用されていなか った。(全国的に完全に運用が始まったのはかなり後と記憶しています。) 当然、柱梁耐力比はNG。しかし、既に鉄骨は発注しているため、変更も 出来ない。もはや私の手には負えず、困り果てた私は上司に相談をした。 役所に事情を全て話し、クライアントに構造耐力的にやや問題がある事を 納得して貰った文書を提出する事で何とか勘弁してもらえた。 上司にはあまり怒られなかったけど、クライアントには印象悪かっただろ うなあ。 |
ウイルスにやられた
5、6年前の事ですが、某県のゴミ焼却施設の設計をしていた 時の事です。この建物は、規模が大きいのもさる事ながら、構造 形式は鉄骨造とRC造の混構造、設備最優先で計画されるために 柱抜け・梁抜け有り、また、各所に吹き抜けがある多剛床となる 構造モデルとしてはかなり複雑になる建物でした。 一貫計算プログラムの入力もかなり苦労し、当時のパソコンの 能力では解析に数時間かかったため、なんとか不安定な箇所も解 消し一貫計算プログラムも流れるようになるのに1週間程かかっ た。 翌日、会社に行き、パソコンのスイッチを入れた所、 タチアガラナイ・・・ もう自分ではどうしようも無く、システムの担当者に診てもら った所、原因は判らないが、復旧は不可能であり、再セットアッ プが必要との事であった。 1週間かかって作ったデータは全てパ ーになった。 その日は仕事にもならないので早々と帰宅し、夕方のニュース を観ていたら、コンピュータウイルスが蔓延しているとの事。 「まさか、ウイルス??」 当時、ようやく各社員にメールアドレスが与えられた頃であり ウイルスに対する意識もほとんど無く、何の対策もしていなかっ た。私が帰った後、社内でもウイルスが原因である事が判明して いた。(他にもウイルスに感染しているパソコンがあり、不審な ファイルが発見され、そのファイルを起動させた時にパソコンが 壊れた事で発覚した。) なんで自分のパソコンに(悲)・・・ |
無開口壁かと思ったら・・・
ある公民館の設計をした時の事です。竣工後、家の近所でもあ
るので休みの日に見に行きました。中に入り、廊下を歩いていて 何気なく上を見上げました。 その部分は中庭に面する外壁で階の中間に部分的に屋根スラブ がありました。(その上部は吹き抜け) すると、無開口の壁と思っていた部分が 何と全面開口 であったのでした。 次の日に設計時に貰った平面図、立面図、矩計図を見直しまし たが、この部分は表現されてませんでした。しかし、良く考えて みると排煙(採光?)のための開口があると考えるのは当然?。 構造図でもその壁は伏図にも軸組図にも表れない部分ありまし たが、伏図には『特記無き壁はW15とする。』 と書いておい たので当然、15cm厚のRC壁で施工されると思っていたのですが・・・。 この壁は耐震壁ではありませんが上部の梁は壁付きの梁とし て最小限の断面としてました。 この梁をあらためて計算するとやっぱりNG。でも壊れてない から大丈夫って事?? |
地下外壁の設計
斜面地に建つマンションの設計をした時の事です。1層分の片側
土圧を受ける建物で、1階部分は駐車場で上部階が住居となってい
ました。
上司:「この地下外壁の高さはどこで計算してる?拘束条件は?」 私 :「高さは1階の階高で、"上辺ピン下辺固定"の一方向 版として設計をしました。」 上司:「おい、それじゃダメだろ。だって、1FL部分にスラブ が無いじゃないか。このような場合は、高さは耐圧版 までの高さにして、縦筋も地中梁を通して耐圧版 まで定着させるんだよ。当然、耐圧版にもその反力 がかかるから同等以上の断面にする必要があるよな。」 その後、よく説明を聞くと地下階は通常、2重スラブにするので 地中梁の上下がスラブで拘束されるので地中梁天端が固定の支点と 言う仮定が成り立つとの事。 再検討をした結果、壁厚はアップ。保有耐力はNG。この日も徹夜 になりました。 |
構造設計失敗談3連発
千葉県であるマンションの設計をした時の事です。同じ千葉市内で
3階建てと6階建ての2棟を同時に設計しており、2棟とも上部架構
の設計を終え、地盤調査の結果を待っていました。
調査の結果、3階建ては”べた基礎”、6階建ては”場所打ちコン クリート杭”としました。 設計を終え、確認申請用の書類を用意している時、 「○○さん、これ柱状図の住所が違ってますよ。」 「・・・」この日は徹夜になりました。 ある体育館の設計をした時の事です。かなりスパンの大きな建物と なるため、念のために任意形平面フレームの応力解析プログラムでも 検討するように上司より指示をされました。 結果を上司に見せた所、 「結構、変形が小さいな。ヤング係数を1桁間違ってないか?(笑) たまにあるんだよな。まあ、こんなもんか。」 一応、ヤング係数を調べた所、「・・・」。 あるマンションの設計をした時の事です。デベロッパーを交えての 打ち合わせは各部屋のプランを中心に進められ、立面計画は簡単な スケッチ程度でした。 設計を終え、CAD担当に図面の指示を出し、チェック図をもらった 時に 「○○さん、4階の柱梁の断面が無かったので空欄にしときました。」 と言われ、立面図を良く見ると、「・・・」。 階数を間違えてなんて、間抜けな事はとても言えず、気付かれない ように検討をし、何事もなかったかのように4階の断面を記入しました。 |
杭の先端N値
鉄骨2階建ての店舗を設計した時の事です。この物件は後輩に担当
させ、杭については基盤の層までは深く、低層の鉄骨造店舗でもある
ため、杭の周面摩擦に多くを期待したジオトップのMT工法で行うよ
うに指示をしました。 時間も無かったので私がチェックもせずに確認申請に出し、確認申請は 難無くおりたのですが、後日、私が見た所、柱状図に杭先端から下方 1D上方4Dの範囲に線が引いてあったのを見た時にイヤな予感がしま した。 地盤調査の結果は深度12.0m程度にややN値の取れる層厚3. 0mの細砂層があり、杭先端はこの細砂に2.5m程度入って所に なっていました。以深は、またN値の小さくなるシルト質細砂層でした。 私 :「これ、杭の先端N値いくつで見てる?」 後輩:「杭の先端から下方1D上方4Dの平均N値 で計算しています。」 私 :「それじゃまずいだろ。下方1D上方4Dの意味は 支持層にそれだけ貫入させろって事だろ。だって、 杭の先端支持力に杭の上方のN値が影響するかよ。 この下のN値はいくつでもかまわないって事ない だろ。下の弱い層を考慮して先端N値を決めるべ きだろ。」 後輩:「・・・」 屋根は設備の点検に人が上がる程度であり、機械の荷重も考慮していたので のL.L.を取り除いたりして何とかつじつまを合せときましたが。 まあ、いっか。低層だし。 |
鉄骨梁の現場溶接工法
今までに数多くの店舗・ショッピングセンターの設計を行ったが、コスト
ダウン・工期短縮を目的とした様々な工法を行った。
この物件は、鉄骨建方及び鉄骨加工の工期短縮のために梁の継ぎ手を通常 のスプライスプレートと高力ボルトによる接合ではなく、ウエブをピン接合 とし、フランジを現場溶接とする工法とした。 この方法だと鉄骨の建て方が通常クレーン1台1日当り35ピース程度の ものが、50〜60ピース程度とする事が可能である。また、仕口部の梁の 工場溶接も無いので鉄骨加工日数も短縮出来る。現場溶接の工程は増えるが。 ある日、先輩社員達と話をしていた時に 「鉄骨BOX柱の場合は、梁端部の曲げにウエブを考慮 してはいけない。」との意見が出た。 ウエブ部分は、フランジ部分のようにダイアフラムが無いので柱に曲げを 伝達出来ないのでセンターの指針でも考慮しないように推奨しているとの事だ。 数人で討論しましたが、結局、 「梁端部をウエブをピン接合、フランジを現場 溶接とするような場合は当然考慮出来ないけど、通常の場合は考慮しようよ。」と 言う事になった。 「・・・・・・・」 先の物件は、ウエブを考慮していた。(SS1の計算条件でウエブを考慮する としている。) 当然、部材はギリギリで設計していた。 |
積雪荷重を・・・
新潟県であるRC造5階建てのホテルを設計した時の事です。多雪地方で
あり、一貫計算プログラムSS1の積雪荷重の項目も入力しました。 が何と、このプログラムはRC造・SRC造の場合は、積雪荷重を考慮し てくれないのでした。 (今は、入力画面に「RC部材、SRC部材については積雪荷重を考慮して 断面算定できません。」とメッセージが出ますが。) 私は地震力・応力を良くチェックもせず、そのまま断面検討をしてしまい ました。後日、その事に気付いた時は既に着工しており、「間違っていまし た」とは言い出せない状況でした。 積載荷重に積雪荷重を入れて、検討し直すと短期でNGの箇所が数ヶ所。 雪の降る季節に地震が来ない事を祈るだけです。 積雪荷重関連の失敗ではもう一つ。鳥取県でRC7階建ての病院を設計し た時の事です。関東出身の私は西日本地方は雪なんか降らないだろうと思い 込んでおり、積雪荷重を気にせず設計していました。 しかし、鳥取市は多雪地域であったのでした。 幸い、設計変更があり、その時にどさくさにまぎれて、補強をかけました。 良く知らない地方では面倒くさらずに積雪荷重を調べましょう。 |
場所打ちコンクリート拡底杭の設計径と施工径
都内某所でRC造10階建てのマンションを設計した時の事です。地盤調査
の結果、支持層は35mと深かったため、杭はアースドリルの”拡底杭”としました。
その時、私は拡底杭の実際の施工径は設計径+10cmにしなければなら ない事を知らず、構造図 杭リストの拡底径は設計径を書きました。 後日、ある先輩社員の物件を手伝っている時にその事を教えられました。・・・ まあ、良いか、余力で杭の周面摩擦もあるし。 |
自作プログラム
インターネットでもあちこちにEXCELによる構造計算シートとか
あるが、私も市販のソフトに無い部分計算を行うために構造計算シート
を作る時がある。EXCELについては色々な本を読み漁り、結構詳し
い方だと思っているつもりでいる。 RC7階建てのマンションを設計した時の事である。この時も地中梁 の人通孔補強筋の検討を行うために自作の計算シートで設計した。 この計算シートは地中梁の配筋、応力等から補強筋を設計出来るよう にし、補強筋径に応じて、鉄筋のftも自動的に変わるように計算式を 組んでいた。(D16以下:SD295A、D19以上:SD345) 参考文献の設計例を入力し、計算内容をチェックした。当然、入力項目 以外のセルは保護をかけていた。 そして、確認申請の時に『人通孔補強筋の検討で途中の計算式を書く ように』と指摘があがってきた。 「こんなつまんない所を指摘すんなよな。算定式が書いてあるのだから 自分で計算すれば良いじゃないか。」と思い、しぶしぶ、計算式を 書いていたら・・・。数字が合わない。 そんなはずは無いと思い、EXCELの計算シートをチェックしてみ たら保護されているはずのシートが保護されていない。更に良く見てみ ると補強筋のftが違っている。その時に私は以前、補強筋をD29 (SD390)で計算するために自動的にftが変わる計算式を変えた 事を思い出した。計算シートはそのまま上書きされていたのであった。 この物件は訂正を行ったが、この計算シートで幾つの人通孔を設計 してしまっただろう。それ以来、私はこの種の計算シートを作る場合 は途中計算が表示されるようにし、使った時は必ず、チェックするよ うにしています。 |
プログラムの特性
一貫計算プログラムはユニオンシステムSS1/US2を使用していますが、
このプログラムの特性・入力方法を理解していなかったために先に紹介した積雪
荷重の件の他にも数々のミスをした事がある。
エピソードT 〜「開口の包絡」 SS1では、開口データの登録において複数の開口をつながった一つの開口と みなす「開口の包絡」と言う設計条件の入力項目がある。この設計条件はデフォ ルトでは「包絡する」となっています。 RC造の公民館を設計した時の事です。ある壁には2つの開口があり、開口率 からすれば耐震壁になるのですが、この設計条件を「包絡する」としていたため、 耐震壁とは認識されず、雑壁として設計してしまった事があります。 耐震壁が無くても大丈夫なように設計したから良い?。 やっぱり、マズイか。 エピソードU 〜「支点の浮上り耐力」 RC造3階建てのマンションを設計した時の事です。設計ルートはルート3とし ユニオンシステムのUS2で保有耐力の検討を行いました。 低層建物ではありますが、一応、計算条件を「支点の浮上りを考慮する。」とし て解析を行いました。各支点の浮上り耐力を入力する箇所がありますが、面倒なの で安全側だと思い、入力せずに浮上り耐力を”0”のままにしておきました。 保有耐力はすんなりとOKとなったのですが、後日、別の物件でUS2は計算条 件を「支点の浮上りを考慮する。」としても、浮上り耐力が”0”のままでは、浮 上りを考慮してくれない事に気付きました。 まあ、良いか。たぶん、大丈夫だろう。 |
腰窓付き壁の構造スリット
袖壁等の影響で剛性が大きくなり、水平力が集中してしまうのを
防ぐのに構造スリットを設ける事がある。完全に剛性を無視する
には基本的に3方向完全スリットとする必要がある。私もこのような場合は
柱際と壁下端に完全スリットを設ける方法としていた。 ある時、先輩社員の担当している物件を見た時に開口部に沿って 縦にスリットが入っていた。 私 :「どうしてこんな形でスリットを入れるの ですか?」 先輩社員:「だって、お前。腰壁の下端にスリットを 入れたら壁が倒れちゃうだろ。」 私 :「・・・・」 腰窓付きの壁の下端に完全スリットを入れてしまった事が私にも覚えがある。 現場はどうなっていただろう。大丈夫かな。 |
梁の内端、外端
あるマンションの設計をした時の事です。各層8世帯あるマンションで
左から4スパンが同じプランであり、小梁の配置は4スパンの連続梁とな
配置とした。この連続梁となる部分に関しては端の小梁のみ外端、内端を
分けた配筋とした。
そして、現場検査に行った時、何とこの小梁の配筋が内端、外端が逆に なっていたのでした。その事を現場担当に指摘した所、 「何でだよ、建物の内側に来るほうが内端だろ。 設計図がおかしい。」と言われました。 その後、良く聞くと鉄筋屋さんからの質疑に対して、現場内部でも議論 があったそうなのだが、結局このような配筋を指示したそうです。 梁の内端、外端の意味を説明し、鉄筋を補強してもらいましたが、 現場所長からは 「鉄筋屋さんや現場担当がそんな事判るか。お前の図面の 書き方が悪い。」と叱られました。 それ以来、内端・外端の表現はやめ、“@端、A端”と言うような表現 をするようにしています。 |
姉歯事件の後、このページについて堂々と設計ミスを書いているとの
批判をいくつかのホームページ・ブログで見かけました。 こんな事を言っちゃうと面白くないですが、このページに載せている失敗談は いくつかは本当ですが、その他は作り話です。(失敗寸前だったものもありますが。) 会社に就職したての頃、先輩社員に連れられて良く飲みに行った。仕事が終わった後まで 会社の人と居たくないと言う同僚もいたが、酒好きの私は着いて行った。 年齢も趣味も違う中では、共通の話題は仕事の話のみ。そんな時、先輩達の仕事上の失敗 の自慢合戦?になる事が良くあった。 人間は失敗から学ぶ事も多いと思いますが、経験の少なかった当時の私にはこの話がとても役にたった と思う。 このページでは先輩達が私に話してくれたように私の失敗談を紹介し、これを読んでくれた 人が同じ失敗を避ける事が出来たら幸いです。 |
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