ご存知、高性能構造設計プログラムmidas。多くの構造家にも使用されており、その性能については誰もが認めるプログラムです。
マイダスアイティとは、どのような会社なのか、マイダスアイティジャパンの担当者様にインタビューしました。
マイダスアイティで扱っている建築用プログラムとしては、任意形状構造物の汎用構造解析ソフトウェア「midas iGen」、
形状に制限のない一貫構造計算ソフトウェア「midas eGen」、構造図面を自動生成する2次元情報CAD「midas Drawing」が
あります。また、他の一貫構造計算プログラム(SS3等)から、構造図自動生成する「CADロボ」は無料で提供されています。
─ まず、マイダスアイティの会社の概要を教えて下さい。私達、一般の構造設計者が知っているのは、高性能構造解析プログラムmidas iGenを作っている韓国の会社と言う程度です。
「マイダスアイティは、科学技術用シミュレーションソフトウェアの開発及び普及を行っている会社です。
マイダスアイティの核心となる技術はシミュレーション技術です。このシミュレーション技術は自然界の現象を数学的にモデリングし解析を行い、その結果をコンピューターグラフィックスで表現するものです。
マイダスアイティでは建築構造物だけではなく、土木分野の橋梁解析、地盤分野のトンネル、ダム、防波堤、液状化の解析、製造分野の機械や自動車、電磁の解析、CFD(流体解析)など、様々な分野のソフトウェアを開発し、普及しています。
最近は、このようなシミュレーション技術をもとに我々の脳をMRIで撮影し、その画像を3次元のシミュレーション技術を活用してアルツハイマー型認知症を判断する人工知能診断医療ソリューションにも進出しました。
現在マイダスアイティは韓国に本社を置き、8つの海外法人(日本、米国、中国、インド、英国、ロシア、ドバイ、フィリピン)と28カ国の海外代理店を介して110カ国にソフトウェアを普及しています。
」
─ ちなみに韓国でのマイダスのシェアはどのくらいなのでしょうか?
「韓国の建築分野でGen(日本ではiGenと呼ばれています)の占有率は99.9%です。実際、韓国の建築構造設計者は実務でGenを100%使っています。ただ、大学の研究室や学会などでは自作のプログラムを使用するところが若干あります。」
─ 実質100%とは凄いですね。御社が韓国の構造設計基準を作っていると言っても過言ではないレベルです。
私達が韓国に旅行に行って、入った建物もmidasで設計されていると言う事ですね。
─ midas iGenはいつから、日本で販売されているのですか?私がmidasを始めて使ったのが確か、2005年です。複雑な鉄骨接合部のFEM解析をmidasで行いました。その時は構造計画研究所さんから、プログラムを購入しました。
「日本で弊社の製品を販売し始めたのは2002年になります。最初は構造計画研究所さんを代理店として販売を開始しました。その後、2008年からは日本法人を設立し、直接製品の普及を行っています。
特に、日本の構造設計者の多様な意見を積極的に反映して日本向けの製品としてリリースされたのが建築構造分野の汎用解析プログラムmidas iGenとなります。」
─ 日本では後発となりますが、凄い勢いで普及したと思っています。私達、日本の構造設計者の中でも「どんな形状でも高度に解析できる凄いプログラムがある。」と話題になりました。有名な構造家と呼ばれる方も多数使っています。特殊な構造物を解析するプログラムとして開発されたものなのでしょうか?
「midas iGenは最初、プラント施設の解析のために開発されました。そのためフレームだけでなく特殊な容器構造なども解析できる必要があり、板要素やソリッド要素などを搭載したFEM解析プログラムとして開発されました。そのような意味では特殊な構造物を解析するためのプログラムとして開発されたと言えます。
現在は特殊な構造物はもちろん、一般的な構造物からCLTや木造など、あらゆる建築構造物に対して活用されています。
」
─ midas eGenについて、お聞かせ下さい。eGenがリリースされたのは2014年ですよね。「あのマイダスがついに一貫構造計算プログラムを出した。」と話題になりました。
一貫構造計算プログラムと言う呼び方は日本独自のものと思いますが、日本のユーザー向けに開発されたものなのでしょうか?韓国や他の国でも同じようなプログラムが使われているのでしょうか?
「お話しの通り、海外では日本の一貫構造計算プログラムのようなものはありません。
midas eGenは日本のユーザー専用に開発されたものとなります。
日本でiGenの販売を開始してからユーザーの方が増えていくにつれて、iGenのように直感的な操作で、形状に制限なくモデリングできる一貫計算プログラムを作ってほしいという要望が増えてきました。そうしたユーザーの方の声に応えるために eGenの開発が始まりました。
現在では日本のeGenの技術を活用して、nGenという類似の製品を韓国やインド、ロシアで普及を進めています。」
─ midas eGenの開発技術者の中には日本人も居るのでしょうか?日本向けの一貫構造計算プログラムとなると日本の建築基準法や各種設計基準に精通している技術者が必要と思います。ちなみにマイダスアイティジャパンの社内の公用語は?
「midas eGenの開発技術者は日本で構造設計の実務経験があり、構造設計一級建築士の資格を保有している日本の構造設計者が直接企画をしています。彼らは構造設計実務での経験を活かして、日本の構造設計者の方に喜んで使っていただけるような製品を目指して製品を作り続けています。尚、社内の公用語は日本語です。
」
─ 先ほど、midas eGenを一貫構造計算プログラムと呼んでしまいましたが、他の一貫構造計算プログラムと比較して、様々な機能があります。どのようなプログラムを目指しているのでしょうか?
「midas eGenを一貫構造計算プログラムと呼んでいただいて問題ありません。 eGenはまさに一貫構造計算プログラムとして開発されています。他社の製品とインターフェースなどの雰囲気は大分異なりますが、計算に関する機能や出力される計算書の内容につきましては、他社の一貫計算プログラムと大きな違いはありません。
eGenは構造設計者の方がストレスなく、自由な設計をできるような一貫構造計算プログラムを目指して開発されています。開発のきっかけは、ユーザーの方からのiGenのように自由度の高い一貫計算プログラムが欲しいという要望であることはお話しましたが、その要望の根幹は一貫計算プログラムの機能に制限されることなく、自由にかつ効率的に設計したいということだと言えます。
構造設計者の方は一貫構造計算プログラムでモデルが組めない場合、iGenなどの汎用解析プログラムで解析を行い、その結果を利用してエクセルなどで設計をしています。これには相当な労力がかかります。また、建物の一部を簡略化すればモデル化できる場合もありますが、それに対しても、別途に追加検討書を作成しなければなりません。一度計算書を完成させるだけでも大変ですが、モデルが変更されるたびに、追加検討書を作り直さなければならず、1つの建物の設計にかかる労力は大変なものです。このような構造設計者の負担を少しでも軽減したい、というのが私たちの目標です。
他にも構造設計者の負担を減らすという点では、2次部材の設計も挙げられます。一般的に2次部材の設計は一貫計算とは別に構造設計者が行います。eGenではこれらの2次部材の設計も行います。それも、小梁やスラブだけでなく、デッキスラブや水平ブレース、片持ち梁などもです。」
─ 一貫構造計算プログラムだけでは解析できない建物モデルはたくさんあります。任意形状の解析プログラムやEXCEL等を利用して、補正検討、追加検討を行っています。
確かに労力はかかりますが、それが構造設計と考えているので気にしていませんでしたが、その作業が大きく改善される事は我々、構造設計者にとっても有益な事です。最も大切な「構造計画」
に時間を割く事が出来るようになります。
「現在ではmidas Drawingという、一貫計算のデータから構造図を自動で生成するCADもリリースしています。Drawingは構造図の作成時間を大幅に短縮するだけでなく、一貫計算と整合のとれた構造図を生成できるため、構造設計者が普段多くの時間を取られている、整合性チェックの負担軽減にも非常に有効です。DrawingはeGenだけでなく、他社の一貫構造計算プログラムの構造図も生成することができますので、すべての構造設計者の方に実務ですぐにご活用いただけます。
さらに、eGenモデルの変更内容をDrawingで生成した図面に更新する機能まで開発されています。今後は、設計変更が生じるたびに一貫計算モデルと構造図を別々で修正する必要がありません。eGenとDrawingをセットで使用することで、構造計算書と構造図の作成を同時に行うことができ、それによって常に計算書と整合のとれた図面を確保することができます。
その他にもeGenは現在、汎用解析プログラムiGenとの連携も進めています。今まではマットスラブの接地圧の検討や、歩行振動などの検討を行う場合には、一貫計算とは別にiGenでモデルを一から作成しなければなりませんでした。今後はモデルを作り直さなくても、一貫計算のモデルを読み込んで、素早く解析が実行できるようになります。
最終的には一貫構造計算、構造図、汎用解析の情報を1つのモデルでストレスなく連携できるような設計環境を提供したいと考えています。」
─ midasは特殊な建築物の設計や構造家と呼ばれる構造設計者のみが使うプログラムではなく、全ての構造設計者の作業効率を向上させ、
よりクリエイティブな仕事が出来るようにするためのプログラムなのですね。
─ 人工知能AIへの取り組みは行っているのでしょうか?企業秘密もあると思いますのでお答えできる範囲で構いません。
「結論から申し上げますと、AIへの取り組みはもうすでに行っています。マイダスアイティは先ほどお話ししたように、構造解析や設計だけでなく、多様な物事に対してシミュレーションができる技術力を備えています。
具体的には、世界で初めてニューロサイエンス(神経科学)と人工知能をベースとした人事採用ソリューションであるAI面接プログラム(商品名InAir)を開発し、韓国ではすでに300社以上の企業に普及しています。
AI面接のシステムは、生物学とニューロサイエンスを適用し、人の力量をより科学的かつ統合的な側面で捉えられるようにしたのが核心となるアルゴリズムです。それに加え、ビッグデータとクラウドコンピューティング技術を活用することにより、常に精度が向上されています。
AI面接システムを通して就職を希望する志望者が、自分がどんな業務に適しているのか、その業務を行う際に良い成果を出せるのかを確認して、より適した会社を見つけることができるようにサポートします。そして採用する会社には、会社の業務で良い成果を出しながら職場のチームとシナジーを作り出すことができる志望者を探すことをサポートします。それによって志望者と会社ともに幸せにするのが核心となる価値であり目標です。」
─ 最後に日本のユーザー、構造設計者に向けてメッセージをお願いします。
「日本の構造設計者の技術力は世界で非常に高いレベルだと言えます。特に耐震設計では、世界最高と言っても誰も疑わないでしょう。現在の設計方法や業務慣習を維持するだけではなく、業務革新を行い、慣習を変え続けていくことが引き続き世界最高の技術力を維持することにつながると思います。
構造設計者が本来の構造設計業務に集中しながら技術力を高めるためには、時間と労力という限られた資源を効率的かつ効果的に活用する必要があります。そして、構造設計者の多くの時間が計算書と図面の作成業務に割かれています。
マイダスアイティは構造設計者が本質的な価値に焦点を当てることができるソフトウェアを開発するために最善を尽くしており、これらの価値に最も近い製品がmidas eGen&Drawingであると自信を持って言うことができます。」
─ 本日はありがとうございました。今後も我々、構造設計者がよりクリエイティブな思考が出来る環境を
提供して頂ける事を期待します。
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