【建築構造設計インタビュー】
バーチャルYouTuber 住場みやこ さんにインタビューしました。

 

令和4年6月12日

 遂に構造設計業界にも、バーチャルYouTuberが登場しました。その名は『住場(すめば)みやこ』さん。 YouTubeチャンネル「住場みやこ ch.385」ではVTuber住場みやこさんがゲーム実況の他、建築関連動画、構造設計一級建築士の修了考査解説を行っています。



 バーチャルYouTuber住場みやこさんはどのような方なのか、どのような活動を行っているのかを探るためにインタビューをさせて頂きました。





住場みやこさんは建築コンサルタント!

─ 初めまして。今まで何人かの構造設計に関係する方にインタビューをしましたが、バーチャルYouTuberさんとお話するのは初めてで、少し戸惑いがあります。。。まずは住場さんについて、お伺いしたいと思います。女性に失礼ですが、最初に年齢をお聞きして宜しいでしょうか?

「初めまして、バーチャル建築コンサルタントとして活動しています、住場みやこと申します。バーチャルYoutuberとしてのキャラクターと、いわゆる”中の人”は同一だと思っていただいて大丈夫です(笑)

 年齢はですね、公表していないのですが、だいたいアラフォーに足を踏み入れた最後の昭和世代と思っていただければ…(笑)」


─ ところで、背中にある物は???

「これは建築系の方には馴染み深いと思いますが、製図道具のT定規ですね!学生の頃、必ず製図道具を一式買わされた経験が皆さんあると思いますが、私は実際T定規を使って製図したことが無かったんです。その後長いこと家の物置の片隅に置いてあったんですが、ちょうどバーチャルYoutuberのキャラデザインを考えているときに久しぶりに見つけて、”建築”をキャラクターに落とし込むのにちょうどいいと考えて、T定規を背負ってみることにしました。

 使い道は、もっぱら武器ですね!(笑)

─ 武器!?女性に年齢など聞いてすいません。住場さんに攻撃されないよう、失礼なことは言わないように気を付けます。。。

「基本的には護身用ですので、自ら進んで誰かを攻撃するわけではないです(笑)」

─ 安心しました。ではインタビューを続けます。
 住場さんの自己紹介動画では建築コンサルタントをしていると話されていますが、具体的には、どのような仕事をされているのでしょうか?


「はい、いわゆる建築設計、意匠設計をメインにやらせていただいてますが、プラスアルファとして中古物件のリノベーションや、必要に応じて土地や物件探しも合わせてやらせていただくこともありますので、建築の設計だけじゃなく不動産関係も含めて仕事をしてますという意味で、”建築コンサルタント”という肩書でやらせていただいてます。
 あくまでバーチャルの中でのキャラクターというスタンスですので、キャラクターの設定として実際の資格などを明言することはしないようにしています。」

構造設計一級建築士講習について勉強した内容をYouTubeで公開!

─ YouTubeチャンネル「住場みやこ ch.385」について、お聞きしたいと思います。YouTubeを始めようと思ったのは何故ですが?きっかけは?

「実はちょうど活動を始める前、2020年の秋ごろにパタッと抱えている仕事が無くなってしまったのですね。事務所に出社してもやることがないという時期がありまして。その時に何か新しいことを覚えようとして、この頃からunityというゲームエンジンを触り始めたのが最初のきっかけです。

 この頃にはARやVRといった技術もどんどん進んできていることは知っていたのですが、今後は建築分野でもこのような技術を理解しておくことが重要になると思い、最初はunityを3DCADのように使ってみたりしていたのですが、それと関連してVRoidという人型の3Dモデルを作成できるソフトを使って、「住場みやこ」というキャラクターを作ってみた、という流れですね。

 また、同時期にプライベートで動画編集をする機会があったので、動画作成ソフトをいろいろと触っていたこともあり、試しにいろいろunityで動画を作って遊んでいたのですが、せっかくなら誰かに見てもらえば、あわよくばアドバイスなんかもいただけるのではないかと軽い気持ちでYoutubeを始めてみました。
 最初の方の動画は今見るとホントに恥ずかしい出来ですが、unityのいろんな機能を覚えるために作成していたということもありますね。最近の解説動画ではunityはほとんど使っていないですが・・・」

─ では、本題の構造設計関連の話に移りたいと思います。
 YouTubeでは様々な教育系動画があります。建築関係でも一級建築士対策の動画は多数ありますが、構造設計一級建築士の修了考査解説を始めたのは何故でしょうか?


「はい、実は私も昨年度の構造設計一級建築士講習を受講したのですが、勉強をするにあたっていろいろとネット上を調べましたが、修了考査に関する情報がほとんどなかったので、一から勉強するのはかなり大変でした。Youtubeでも構造設計一級建築士の解説動画は無い状況でした。
 せっかくバーチャル建築コンサルタントとして活動しているのだから、何らかの形で自分が勉強した成果を形にしようと思っていましたので、動画の形で出してみようと思いました。
 もちろん、動画編集ソフトの練習も兼ねたり、考査の復習といった面もありますので、自分のためというところもあります(笑)」



─ 昨年度、構造設計一級建築士を受講したのですね。結果は如何でしたか?

「昨年度受講した修了考査では法適合確認だけしか修了していないので、お恥ずかしながらまだ取得には至っておりません・・・」

─ そうでしたか。でも、これだけの解説が出来るので今年度はきっと大丈夫ですよ。

 一級建築士の試験対策は試験問題の公開(無料)がされており、多くの過去問題集や参考書、テキストが出版されています。一級建築士試験対策は確立されており、解説動画を作るのも参考にする資料はたくさんあります。しかし、構造設計一級建築士については無料での考査問題の公開もなく、参考書などの出版もありません。修了考査解説動画を作るのもかなり大変かと思いますが。


「日本建築構造技術者協会(JSCA)さんで発行している過去問の問題集には解答例しか載っていないので自分が勉強して理解したことを動画で公開しています。構造設計を勉強している皆さんの役に立つかもしれないですし、もちろん自身の知識の穴を埋めるという点でもプラスになると考えています。
 公開している動画の内容は、ちゃんと別の構造設計一級建築士に見てもらっていまして、大きく間違ってはいないと思いますので、そこは安心してください! 」

─ 私も動画を拝見しましたが、内容は問題ないですよ。

構造設計一級建築士対策は黄色本や講習テキストを読み込む、過去問での問題慣れなど基本が重要!

─ 構造設計一級建築士の修了考査対策についてお聞きしたいと思います。

 住場さんは複数年の修了考査問題の解説を行っていますが、過去問が出たり、出題の傾向が決まってきたりしているように感じますか?


「すでにご承知かもしれませんが、令和3年度から修了考査の出題形式が変わったので、それに合わせて出題傾向も変わったかもしれないと感じています。

 今の時点では過去問の分析まで出来ているわけではないので、何とも言えないところですが・・・頻出問題としては、地盤の許容支持力度から基礎の設計を解く問題はほぼ毎年出ていると思います。あとは構造別で鉄骨造、RC造がバランス良く出題されていますね。
 確かに、過去問の傾向と対策もデータ化して解説できればいいかもしれませんね。今後検討してみたいと思います。」

─ 構造設計一級建築士修了考査は記述式問題があります。記述式問題の回答のコツ、ポイントはありますか?
 何処まで書けば良いのか基準の判断が難しいところです。そう言う点では建築士の製図試験も同様です。住場さんは建築士製図事件の採点委員もされていたそうですが。

「確かに、記述式問題は公式の解答基準もなく、判断が難しいところだと思います。あくまで私の考えですが、解説動画でもできるだけ黄色本や講習テキストから引用して、根拠を明示して解説するようにしています。なので、自分の言葉だけで回答文を考えるよりも、黄色本やテキストから文言を探し出して、簡潔にまとめて記述したほうが、より根拠が明確でまとまりがある回答になるのではと考えています。


─ 総合資格さん、日建学院さんが構造設計一級建築士対策講座を行っています。建築構造設計べんりねっとの調査では合格者に対するシェアは10%程度です。今後、「住場みやこ ch.385」で勉強して合格したとの人が出そうですね。この動画で十分との声も聞こえています。
 構造設計一級建築士取得の対策として、このような勉強をした方が良いというアドバイスはありますでしょうか。


「構造設計一級建築士講習と修了考査については、普段構造設計の実務をされている方にとっては、そこまで問題の難易度が高い内容ではないと感じました。設問の内容は基本的な部分が多く、高度な計算式を暗記しておく必要は無かったです。

 私もそうですが、意匠設計や現場管理がメインのお仕事をされている方にとっては、独学でどこから勉強したらいいのかというのが、情報も少なく分かりにくいところで、そもそもどこから手を付けてよいか悩んでしまうという点があるのかな、と思いました。

 確かに対策講座を活用するというのも手だと思いますし、あとは当たり前になりますが黄色本や講習テキストを読み込む、過去問で問題慣れしておく、ということがまずは大切と思います。私の動画を参考にして勉強する方がいらっしゃれば、少しはお役に立てたという想いで嬉しいです(照)」



─ 住場さんの解説動画は話すスピードが丁度良いと感じました。私も研修の講師をすることがあるのですが、どうしても早口になり、きっと聞いている人が理解するには速すぎていると思いました。動画で解説を行う時に気を付けていることはありますか?

「ありがとうございます。実は私も普段は早口になりがちなので、話すスピードには気を付けるようにしていますが、他にも自動字幕変換、いわゆるgoogleの音声認識を活用して、普段の配信などで字幕を出すようにしているのですが、これが早口だと上手く変換されないんですね。
そのため、配信で落ち着いた速度で話すようになってから、動画を撮っているときも自然とゆっくり話すようになった、という経緯です。

 あと解説動画を編集していて感じたことですが、ホワイトボードに書いた内容と、話す速度をリンクさせないといけませんので、あまり早口になってしまうとホワイトボードを見る時間が早くなりすぎてしまうということも考えて、解説するスピードを調整していたりします。
 解説動画のスピードがちょうどいいと仰っていただけるのは、本当に嬉しいです(笑)」

メタバース時代の構造設計は?

─ 違う話題に移りたいと思います。昨年より、メタバースが注目されています。
今後は掲示板、SNSなどの文字コンテンツでのやり取りは少なくなり、住場さんのようなバーチャル、アバターによる音声でやり取り、コミュニケーションが増えると思いますでしょうか?


「昨今の新型コロナの環境下でのコミュニケーションの方法として、インターネットを活用したコミュニケーションというのは間違いなく増えています。それこそ構造設計一級建築士講習はWEB上で動画形式で行ってますし、普段の業務でもWEB会議などは一気にメジャーになったコミュニケーション方法と思います。
 ただし、いわゆるメタバース、アバターを活用したコミュニケーションとなると、現時点ではまだ技術介入度が高いと感じているところです。現時点では詳しい人や興味がある人が手を出している、というレベルだと思いますし、誰でも気軽に使うことができるようになるには、まだまだ時間がかかりそう、という印象があります。」

─ メタバースが話題になっているので、私も住場さんのようなバーチャルキャラクターを早く作らないとならないかと思っていました。(笑)

 先ほど、unityの話が出ましたが、これは建築、構造設計にも活用できるソフトなのでしょうか?建築に活用されている事例はあるのでしょうか?


「unityでは、他の3DCADソフトと同様に3Dパースも作成できますし、プログラミング言語でも動かせますので、使い方次第では構造設計にも活用できると思います。私もどのように活用できるか試行錯誤してみたのですが、3Dパースを作成したりはもちろん、振動台で建物やモデルを揺らしたり、部材の数量を計算したり、個人でもいろいろ活用できそうだなと思いました。

 公式でも、BIMデータをARで現場に投影したり、BIMデータとunityを連携して活用している事例が紹介されています。構造設計での活用例はちょっと調べられなかったのですが、例えば物理エンジンを使って建築物の構造を解析する、といったことも可能性としては考えられるのではないでしょうか。」

─ BIMも中々定着しませんが、建築業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は更に進んでいるのですね。私もunityについて調べてみたいと思います。

メタバース、バーチャル空間に建物を建築するなども行われているようですが、そのようになると構造設計の仕事はどうなると思います?
 将来の予測は難しいですが、住場さんのお考えをお聞かせ下さい。


「メタバースのプラットフォームでは、バーチャルで様々な空間表現がされていて、現実世界ではありえないようなギミックを駆使した、テーマパークのような空間だったり、より現実離れした幻想的な空間だったり、といったメタバースならではの表現、それも建築の専門家ではない、3Dのクリエイターがそういった空間を生み出している点が非常に面白いと思います。
 最近はコンセプトデザインをCGで検討し、基本構想や基本設計を進めるパターンが多くなってきていますので、よりメタバースが身近なものになってくれば、メタバースで見られるような現実世界ではありえないような空間表現、というものを現実世界にフィードバックさせた建築というのが誕生したら面白いのでは、と考えています。 そうなったとき、構造設計という仕事がより一層本領発揮するのではないでしょうか。

 個人的にこれからの建築は、デザインなどが複雑になっていくと思っています。もちろんメタバース内では構造設計の概念は無くても問題ないと思いますが、現実世界においては物理法則がある以上、構造設計により安全性を確認しなければならないですから、CGを駆使して今まで見たことがないようなデザインに富んだ建築が増えてくれば、構造設計の重要性も増してくるのでは、と思っています。」



─ 最後に今後の活動予定を教えて下さい。建築系バーチャルアイドルとして、人気が出そうですが。

「建築系バーチャルアイドル!ありがとうございます(笑)確かにバーチャルYoutuberの一般的なイメージとしては、歌ったり踊ったりをメインに活動されている方も多いので、アイドルが近いのかなと思います。
 私は歌ったり踊ったりが苦手なので、どちらかというと専門的なコンテンツに吹っ切ってやっていこうという想いがあります。アイドルにはなれそうもないですが、ビジュアルよりコンテンツで見てもらえるよう、これからも頑張って活動していこうと思っています。メジャーにはなれないかもしれませんが、ニッチな方面で人気が出たら嬉しいですね(笑)

 専門的なコンテンツということで、私もそうだったのですが、構造設計というととっつきにくい、難しいという苦手意識を持たれている方も多いのではないでしょうか。そういった方にも少しでも興味を持ってもらえて、見て頂けるようなコンテンツを増やしていきたいですね。
 当面は、構造設計一級建築士講習に関する解説を引き続きやっていきますので、よかったらチャンネル登録いただけると大変励みになります。

 あと全くの個人的な趣味ですが、ゲーム配信もやっておりますので、こちらも興味がありましたらよろしくお願いします!
 建築構造設計べんりねっと様のような、実務者の方が多くご覧になっているサイトで取り上げていただき、活動当初からは思いもよらないことでビックリしております。今後ともよろしくお願いいたします。本日は本当にありがとうございました。 」

─ 本日はありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。建築構造設計べんりねっとも微力ながら、応援します。



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