構造設計一級建築士は構造設計を行うには必須の資格です。『建築構造設計べんりねっと』が構造設計一級建築士を目指す方へ、構造設計一級建築士の必要性、
難易度、資格取得方法、対策、資格取得によるメリットについて、解説します。
平成20年11月28日に改正された建築士法では、一定規模以上の建築物の構造設計については、構造設計一級建築士が自ら設計を行うか、若しくは構造設計一級建築士に構造関係規定への適合性の確認(法適合確認)を受けることが義務付けられました。
この“一定規模以上の建築物”とは以下のような建築物になります。(法20条2号)超高層などの特別な建築物ではありません。
ここで言う“その他政令で定めるもの”とは令36条の2および告示593号にて定められており、『ルート1で対応できないもの』となります。
つまり、構造設計一級建築士でなければ小規模な建築物以外、構造設計は出来ないと言う事になります。
構造設計一級建築士でなくとも、別の構造設計一級建築士による法適合確認を受ければ、対象建築物の構造設計も出来ますが、実情は法適合確認によるケースはほとんどありません。構造設計一級建築士は、構造設計を行うためには必須の資格なのです。
構造設計一級建築士の資格を取得するには、一級建築士として5年以上構造設計の業務に従事した後、国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う講習の課程を修了することとされています。
一級建築士として5年以上構造設計の業務とは以下になります。令和6年度の構造設計一級建築士の資格を受講できる方は平成30年度以前の一級建築士試験に合格した方になります。
大学を卒業して、社会人として構造設計をスタートするのは、23歳となる年です。一級建築士は2年間の実務経験が必要になるので、ストレートで合格して、
25歳。そして、5年間の実務経験が必要なので、構造設計一級建築士を受験できるのは、31歳になる年です。大学を卒業して、最短でも9年がかかる事になります。
尚、建築系の大学を卒業していない場合は一級建築士を取得するために3年間の実務経験を経て、二級建築士、その後、4年間の実務経験を経て、一級建築士の受験資格が
得れる事になるので14年もかかってしまう事になります。
さて、ここで注意が必要なのは、“5年以上構造設計の業務(=実務経験)”として認められるものは以下の業務に限られると言う事です。
平成26年度の講習から、平成25年10月以降に携わった設計補助業務や、工事監理の補助業務については、認められなくなったと言うことです。
つまり、構造図面の作成のみは実務経験になりません。また、耐震診断業務も実務経験にはなりません。
尚、以下の業務は認められます。
・建築基準法第88条に掲げる工作物の構造設計
・耐震補強の設計業務や工事監理
その他、実務経験についての受験資格はコチラを参考にして下さい。
構造設計一級建築士の資格取得講習は、建築技術教育普及センターで行っています。
費用及び講習の内容は以下になります。
55,000円(税込み)
※テキスト代及び修了考査費用を含む。
※構造計算適合性判定員や建築構造士資格者、前年の講習で一部の講習を修了した人は講習費用の一部が免除されます。
構造設計一級建築士の講習は、講義2日間と修了考査(試験)1日からなっています。 内容は以下になり、
木造から超高層、耐震診断と構造設計に関する事、全般となっています。
令和3年度より、修了考査問題の出題形式及び出題数が変更になります。
※詳細はコチラ
内容 | ||
講義 | 構造設計総論 | |
構造関係法令及び法適合確認 | ||
構造設計の基礎 | ||
耐震診断・耐震補強 | ||
構造設計各論 | ||
修了考査 | 法適合確認
(構造関係規定に関する科目) | 理由記述付き4肢択一式10問 記述式問題3問 |
構造設計
(建築物の構造に関する科目) | 理由記述付き4肢択一式10問 記述式問題3問 |
※構造計算適合性判定員や建築構造士資格者、前年の講習で一部の講習を修了した人は講習及び修了考査の一部が免除されます。
受付期間:令和5年6月10日(月)午前10時~6月28日(金)午後4時
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受講資格審査:8月28日(月)頃から受講票の発行通知(メール)
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講義:会場での受講 9月12日(木)~10月1日(火)
:オンライン 9月10日(火)~10月1日(火)
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修了考査:令和5年11月3日(日)
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修了発表:令和7年1月24日(金)予定
過去の構造設計一級建築士の合格率(修了率)は以下になります。構造設計一級建築士の試験(修了考査)は法適合確認と構造設計の科目がありますが、どちらかのみ合格(修了)した場合は
次年度以降、もう片方のみの受験で良い事になります。
過去5年間で見ると、全科目受講者34.2%、法適合確認のみ受講者:59.2%、構造設計のみ受講者:50.8%となっています。
合格率34.2%と言うと難易度が高い資格のように見えますが、構造設計業務に少しでも係わっていれば、だいたい、どちらかは合格しています。次年度以降の合格率は59.2%、50.8%ですので、実質の合格率は75%程度です。
私の知っている人でも居ますが、この受講者の中には構造設計を本業としていない意匠設計者なども含まれています。とすると構造設計を業務にしている人の合格率は80%を超えるでしょう。構造設計を業務にしている人であれば、それほど難しい資格ではありません。
尚、総合資格では8名中で7名合格、合格率87.5%となっています。前年の令和3年度から修了考査問題の出題形式・出題数の変更されましたが既に対策が行われたと言うことでしょうか。
過去の合格率(修了率)はコチラ
講習年度 | 受講区分 |
受講者数 | 修了者数 | 修了率 |
修了者累計 | 備 考 |
平成20年 |
申込区分Ⅰ |
7689 |
2261 |
29.4% |
5983 |
一般受講者 |
申込区分Ⅱ |
2299 |
2299 |
100.0% |
構造計算適合性判定資格者 | ||
申込区分Ⅲ |
2056 |
1423 |
69.2% |
建築構造士等 | ||
合計 |
12044 |
5983 |
49.7% |
平成20年 9月24日発表 | ||
再考査 |
3889 |
694 |
17.8% |
6677 |
平成20年12月16日発表 | |
平成21年 (1回目) |
申込区分Ⅰ |
1147 |
104 |
9.1% |
7762 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
85 |
15 |
17.6% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
1208 |
958 |
79.3% |
構造設計のみの受講者 | ||
申込区分Ⅳ |
8 |
8 |
100.0% |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
2448 |
1085 |
44.3% |
平成21年4月30日発表 | ||
平成21年 (2回目) |
申込区分Ⅰ |
*** |
201 |
*** |
8263 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
*** |
296 |
*** |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
*** |
*** |
構造設計のみの受講者 | |||
申込区分Ⅳ |
*** |
4 |
*** |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
1892 |
501 |
26.5% |
平成21年11月19日発表 | ||
平成22年度 |
申込区分Ⅰ |
773 |
101 |
13.1% |
8506 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
431 |
129 |
29.9% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
382 |
9 |
2.4% |
構造設計のみの受講者 | ||
申込区分Ⅳ |
4 |
4 |
100.0% |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
1590 |
243 |
15.3% |
平成22年12月22日発表 | ||
平成23年度 |
申込区分Ⅰ |
825 |
107 |
13.0% |
8675 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
44 |
13 |
29.5% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
179 |
46 |
25.7% |
構造設計のみの受講者 | ||
申込区分Ⅳ |
3 |
3 |
100.0% |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
1051 |
169 |
16.1% |
平成23年12月22日発表 | ||
平成24年度 |
申込区分Ⅰ |
706 |
99 |
14.0% |
8869 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
24 |
15 |
62.5% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
203 |
79 |
38.9% |
構造設計のみの受講者 | ||
申込区分Ⅳ |
1 |
1 |
100.0% |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
934 |
194 |
20.8% |
平成24年12月19日発表 | ||
平成25年度 |
申込区分Ⅰ |
612 |
160 |
26.1% |
9137 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
71 |
44 |
62.0% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
118 |
64 |
54.2% |
構造設計のみの受講者 | ||
申込区分Ⅳ |
0 |
0 |
- |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
801 |
268 |
33.5% |
平成25年12月18日発表 | ||
平成26年度 |
申込区分Ⅰ |
652 |
176 |
27.0% |
9375 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
60 |
22 |
36.7% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
99 |
40 |
40.4% |
構造設計のみの受講者 | ||
申込区分Ⅳ |
0 |
0 |
- |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
811 |
238 |
29.3% |
平成26年12月17日発表 | ||
平成27年度 |
申込区分Ⅰ |
667 |
181 |
27.1% |
9613 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
105 |
32 |
30.5% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
74 |
25 |
33.8% |
構造設計のみの受講者 | ||
申込区分Ⅳ |
0 |
0 |
- |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
846 |
238 |
28.1% |
平成27年12月22日発表 | ||
平成28年度 |
申込区分Ⅰ |
627 |
131 |
20.9% |
9812 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
143 |
45 |
31.5% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
58 |
23 |
39.7% |
構造設計のみの受講者 | ||
申込区分Ⅳ |
0 |
0 |
- |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
828 |
199 |
24.0% |
平成28年12月21日発表 | ||
平成29年度 |
申込区分Ⅰ |
621 |
122 |
19.6% |
10028 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
87 |
33 |
37.9% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
84 |
59 |
70.2% |
構造設計のみの受講者 | ||
申込区分Ⅳ |
2 |
2 |
100.0% |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
794 |
216 |
27.2% |
平成29年12月20日発表 | ||
平成30年度 |
申込区分Ⅰ |
681 |
229 |
33.6% |
10365 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
74 |
61 |
82.4% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
76 |
46 |
60.5% |
構造設計のみの受講者 | ||
合計 |
831 |
336 |
40.4% |
平成30年12月21日発表 | ||
令和元年度 |
申込区分Ⅰ |
602 |
146 |
24.3% |
10582 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
46 |
16 |
34.8% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
121 |
53 |
43.8% |
構造設計のみの受講者 | ||
旧申込区分Ⅳ |
2 |
2 |
100.0% |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
771 |
217 |
28.1% |
令和元年12月20日発表 | ||
令和2年度 |
申込区分Ⅰ |
593 |
170 |
28.7% |
10867 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
86 |
51 |
59.3% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
111 |
64 |
57.7% |
構造設計のみの受講者 | ||
合計 |
790 |
285 |
36.1% |
令和3年1月13日発表 | ||
令和3年度 |
申込区分Ⅰ |
535 |
134 |
25.0% |
11069 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
80 |
36 |
45.0% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
61 |
32 |
52.5% |
構造設計のみの受講者 | ||
合計 |
676 |
202 |
29.9% |
令和4年1月21日発表 | ||
令和4年度 |
申込区分Ⅰ |
516 |
155 |
30.0% |
11305 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
78 |
58 |
74.4% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
56 |
22 |
39.3% |
構造設計のみの受講者 | ||
旧申込区分Ⅳ |
1 |
1 |
100.0% |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
651 |
236 |
36.3% |
令和5年1月20日発表 | ||
令和5年度 |
申込区分Ⅰ |
562 |
147 |
26.2% |
11492 |
全科目受講者 |
申込区分Ⅱ |
18 |
8 |
44.4% |
法適合確認のみの受講者 | ||
申込区分Ⅲ |
107 |
32 |
29.9% |
構造設計のみの受講者 | ||
旧申込区分Ⅳ |
0 |
0 |
---- |
構造計算適合性判定資格者 | ||
合計 |
687 |
187 |
27.2% |
令和6年1月19日発表 |
まずは 「建築物の構造関係技術基準解説書」を熟読しましょう。修了考査問題の半分以上はこの中に答えがあります。この本は修了考査に持ち込み可ですが、一々、考査中に調べている時間はありません。しっかりと理解しておきましょう。
次に講習で配布されるテキストについて、目を通しましょう。この構造設計一級建築士の資格取得講習のテキストですが、それなりに高度な内容となっています。すべてを理解するのは難しいと思いますが、数回は目を通しましょう。
RC造や鉄骨造は誰でも設計していると思いますが、木造や超高層(振動系)、耐震診断は行っていない構造設計者も多いと思います。修了考査は構造に係わる全ての分野から出題されます。基礎的な部分は押さえておきましょう。
構造計算適合性判定機関で過去の判定事例集などを開示しているものがあります。これも目を通しておきましょう。修了考査の法適合確認記述問題に役立ちます。
構造設計一級建築士の過去問題及び解答は、日本建築構造技術者協会(JSCA)で 販売しています。(価格:4,300円)出題の傾向や記述問題については、どの程度まで書けば良いのかを確認しましょう。過去に出題された問題も形を変えて、出題されている傾向にあるので、過去問題は全て、覚えておきましょう。
少し自信が無いと言う方は、構造設計一級建築士の資格取得対策講座を受講してみましょう。特に記述問題はどのように解答するのが適切なのか、判りずらい問題です。模範解答の説明などは
役立つと思います。また、試験傾向の情報なども取得できるものと思います。
一級建築士取得に対して、現在では完全独学で挑む人は皆無かと思います。ほぼ受験者全員が日建学院や総合資格などの資格取得学校に通っています。構造設計一級建築士も
日建学院、総合資格に通った方が良いのでしょうか。
令和3年度の総合資格の構造設計一級建築士合格率は60%と、全体の合格率の2倍以上です。
しかし、合格者数は9名のみであり、全合格者数202名のうち、4.5%のみです。日建学院が同じ程度と考えた場合、90%以上の合格者は独学で構造設計一級建築士を合格しています。
一級建築士は全ての設計者、工事管理者が受験する資格であり、分野が広くなります。よって、自分の専門分野以外については試験対策として、資格取得学校に通う必要があるのでしょう。構造設計一級建築士は構造設計を業務として
行っている人が受験するので普通に仕事をこなしていれば合格は出来ると言うことです。
総合資格に通っている人の中には構造設計の経験がほぼない人もいます。逆に考えると構造設計経験が少ない人でも合格させてしまう総合資格のスキームは凄いものがあります。
※ 総合資格の上記修了率は週一回(日曜または水曜)の講座に8割以上出席し、かつ、宿題を8割以上提出した全当年度受講生の合格者数、修了率です。
さて、これだけ取得が難しい構造設計一級建築士を取得すると、どれだけのメリットがあるのでしょうか?
これを調査するために建築構造設計べんりねっとでアンケート(構造設計一級建築士の価格アンケート)を実施しました。
アンケート調査によると以下の通り。
≪資格取得、維持にかかる費用≫
・受験、登録 :76,940円
・その他費用 :106,600円
・定期講習 :23,000円 ※13,000×59%(個人負担割合)
合計で206,540円です。
≪手当て等≫
・資格取得一時金 :22,800円 ※133,900×17%(一時金受領者)
・毎月の手当て :858,000円 ※27,500×12ヶ月×10年×26%(手当て受領者)
合計で880,800円です。
10年で674,260円の得をする事になります。
最後に構造設計一級建築士を目指す方へのアドバイス。構造設計を業務として行っていない人でも様々な受験対策を行い、合格してしまう方も
います。
ですが、普通に構造設計を仕事として行っている人は特に対策を行わなくとも普通に合格しています。構造設計を業務としている人であれば、
技術基準解説書などは常に読んでいるでしょう。また、適判対応を通して、事例集も確認するし、適切な設計を自然に習得します。
つまり、一番の受験対策は日々の構造設計業務を頑張る事です。特別な受験対策などは必要ありません。
構造設計一級建築士の修了考査は、「法適合確認」と「構造設計」の2課目に分かれていますが、別々に修了すれば合格となります。問題との
相性が悪く、運悪く不合格になっても再度、チャレンジすれば必ず、合格できます。諦めずに頑張りましょう。
構造設計一級建築士は、3年ごとの定期講習が義務付けられています。
建築基準法構造関係規定、建築学会指針等の改正、改定情報をお届けします。
建築技術教育普及センターのホームページで構造設計一級建築士 修了考査問題の出題形式・出題数の変更が案内されています。
独立して構造設計事務所を経営した場合、年収はどのくらいになるか、試算してみます。