【建築構造設計インタビュー】
構造計算プログラムメーカーの担当者様に構造BIMに関する素朴な疑問を聞いてみた。

 

令和5年4月30日

 2022年末、国土交通省が「2025年にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)確認申請を試行する」と発表しました。国土交通省は建設業界における生産性向上のためにBIMを推進しています。

 しかし、国土交通省によるアンケートではBIMを導入している企業は48.4%と必要性を感じていない企業やコストや業務負担などを理由に導入をためらう企業多いとのこと。小規模な構造設計事務所では導入率はもっと低いでしょう。そもそも、私のようにBIMが何かも理解してない構造設計者も多いのが実情と思います。

 そこで、一貫構造計算プログラムBUSおよび、その後継プログラムである構造モデラー+NBUS7を開発している株式会社構造システム+Revit Op.開発担当者様に構造BIMに関する素朴な疑問を聞いてみました。構造モデラー+NBUS7はBIMへの取り組みが最も進んでいるプログラムです。





BIMは建築業務を効率化するソリューション

─ 私も今までにBIMについて、調べていますが実際に使ったことがなく、BIMについて理解出来ていません。多くの構造設計者も同じだと思います。本日はよろしくお願いいたします。

 BIM(ビム)はBuilding Infortmation Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の略、従来の2次元の図面ではなく、3Dデータを作成することを知っている程度です。
 3D(三次元)のCADは、かなり前からあります。基本的なことですが、BIMとは何が違うのでしょうか?


「BIMが3D CADと違うところは3Dの建物デジタルモデルに様々な情報・属性データ(=インフォメーション)を保有していることです。
 コストや仕上げ、管理情報など様々なデータを取り込むことができます。これにより、設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うことが出来るのです。建築業務を効率化するソリューションとして、注目されています。

 構造に関することでは部材の配置情報やサイズ・配筋・材質などです。構造に関する情報でどんなものをBIMに持たせるべきかについては、bSJ(buildingSMART Japan)や、RUG(Revit User Gruoup)などの各団体で議論が進められています。今後、荷重情報や解析情報なども含まれていくと考えられます。」


─ なるほど、BIMは建設業の生産性を向上させるのに多くの可能性を持っているのですね。
 以前、BIMについて、調べたのですが、構造BIMの活用方法は主に積算のためだと思いました。構造設計者にはどのようなメリットはあるのでしょうか?


「構造設計で用いた情報を積算で使用するといったメリットの他に、施工へのフローの省力化や、構造図と計算書の整合性チェックの省力化といったメリットがあります。

 構造計算データからBIMデータを作成することもできます。BIMデータから構造計算データに変換できれば、構造計算データの入力の手間を省くこともできます」


─ 一貫構造計算ソフトのデータから、BIMデータが作れるとなっています。そもそも一貫データは見た目の形状を合わせることより、モデル化を考え、作成しているので図面にするにはかなりの補正が必要と思いますが。

「一貫構造計算ソフトのデータからBIMデータを作成した場合、ご指摘の通り、設計者がモデル化のために実際と異なる形状で構造計算ソフトに入力を行った部分については補正が必要となります。補正が必要な部分とは、例えば、荷重のみを考慮するスラブ厚ゼロの床や、ダミー部材などが該当します。しかし、その他の実際の形状と合致する部分については補正が不要です。補正の作業を考慮しても、1からBIMモデルを作成するより、一貫構造計算ソフトのデータからBIMモデルを作成したほうが、かなりの省力化になります。

 なお、弊社の一貫構造計算ソフト『構造モデラー+NBUS7』は、建物形状を実際に近い形で入力し、構造モデルは自動生成する機能がありますので、構造計算ソフトにも実際の形状とかなり近いものを入力することができます。」

『構造モデラー+NBUS7』

自在な形状から構造モデルを自動生成

 「構造モデラー+NBUS7」は構造躯体を入力する構造設計プラットフォームである「構造モデラー」と、解析・結果出力を担う一貫構造計算システム「+NBUS7」に内部構造を分離した、統合設計環境です。


BIMは構造設計における整合性確認の業務を省力化!

─ BIMを使うと自動で構造計算書と構造図の整合性が取れると思っているのは勘違いと聞いたことがありますがそうなのでしょうか。構造計算書と構造図の整合確認が不要になるとしたら、構造設計者にとっては大きなメリットです。

「設計者が構造計算のモデル化のために実際と異なる形状で構造計算ソフトに入力を行うことは多々ある事かと思います。そういった部分があるので、「整合性が取れると思っているのは勘違い」と感じられるのではないでしょうか。当該部分は確かに整合性の取れない部分になりますが、その他の実際の形状と合致する部分については整合性が取れています。整合性の取れない部分と取れている部分が混在していても、BIMにより従来よりも整合性確認の省力化は図れると考えています。

 BIMデータは部材配置、サイズ、配筋などのデータを保有しています。BIMデータから、2Dの伏図、軸組図、部材リストを生成した場合、その図面間の整合性は確保されます。

 また、ソフトウェア側としては、整合性チェックの省力化をもっと図れるようなチェックツールや運用方法について、今後も検討していきます。」


─ BIMデータを直すと構造計算データも自動的に直るのでしょうか?以前、調べた時はBIMデータ→計算データは出来ず、常に一方通行、計算データを直すと再度、BIMデータへの変換が必要と思ったのですが。
 先ほどの構造計算書と構造図の整合性の話ですが、一貫構造計算ソフトのデータから部材リストを作成するソフトは従来から、あります。計算書と構造図の整合性が取れていない事態が発生する状況の一つとして、計算、図面作成が完了した後に変更を繰り返しているうちに見落としてしまうことがあります。


「BIMデータから構造計算データにできなければ、ご指摘の通り、BIMデータを直しても構造計算データを直すことはできません。弊社の『構造モデラー+Revit Op.』は、Autodesk社のBIMソフトである『Revit』のアドインプログラムで、『Revit』と弊社の一貫構造計算ソフト『構造モデラー+NBUS7』をダイレクトに双方向連携し、かつデータ共有するソフトです。『構造モデラー+Revit Op.』によりBIMデータと構造計算データを連携すれば、BIMデータの修正を構造計算データに自動的に反映させることができます。

 ご指摘の部分ですが、弊社の製品であれば、Revitファイルのみで構造計算データも一元管理でき、構造計算またはReviのどちらか一方のデータを変更すれば、もう一方のデータにも変更が自動的に反映されますので、変更を見落としてしまうことはありません。

 また、『構造モデラー+Revit Op.』には、「差分インポート」という機能があり、BIMファイルと構造計算ファイルを別で管理したい場合でも、構造モデラーデータの変更箇所のみをBIMデータに差分インポートすることができます。

 これらの機能により、変更の際のチェック業務も省力化されます。

─ なるほど、その機能があれば見落としをする危険性もかなり軽減でき、構造設計者も安心できます。

 複雑な形状の建物を設計するためにBIMを活用したとの記事を見たことがあります。例えば、鉄筋の納まり検討なども自動で出来るのでしょうか?


「サードパーティを含むBIMソフト側の機能になりますが、構造計算ソフトから送り込んだ鉄筋の情報から、鉄筋のおさまり検討を行うことも可能になってくるかと思います。
 BIMモデルの運用において、一つのソフトウェアに依存せず、各メーカーが得意分野を生かして開発した様々なツールを使用できることもBIMのメリットです。

『構造モデラー+Revit Op』

一貫構造計算とBIMとの新しいデータ連携のカタチ

 「構造モデラー+Revit Op.」は、一貫構造計算ソフトウェア「構造モデラー+NBUS7」とオートデスク社のBIMソフトウェア「Autodesk Revit®」間でデータ共有を実現する「構造モデラー+NBUS7」のオプションプログラムです。


BIMによる確認申請とは

─ 2018年、大和ハウス工業がBIMによる確認申請を行ったことがニュースになりました。BIMによる確認申請とはどういうことなのでしょうか?2Dの図面を提出するのではなく、3Dデータを提出し、審査機関もそれをチェックするのでしょうか?記事によると計算プログラムは御社のBUSを使っていました。

「BIMによる確認申請では3Dデータを提出するものと思います。BIMモデルのデータがあれば、そこから切り取ることで、2Dでの図面表示が可能ですし、例えば、部材リストなどを作成することも可能です。

 2021年の清水建設様の「BIMデータと法適合判定プログラムで建築確認の事前協議を実施」では、弊社の『BUS-6 +Revit Op.』(『構造モデラー+Revit Op.』の前製品)を使用していただきました。RevitモデルからBUS-6+Revit Op.を通して直接BUS-6データにできることで、BIMデータと構造計算データの整合性が図れると評価され、当該BIM事前申請の構造計算部分にご利用いただきました。」


─ 審査機関側にもメリットがあるのですね。審査機関の短縮にもなりそうです。

 以降のBIMに関する記事を見ても、BUSを使用しているのが多く、BIMへの取り組みが最も進んでいると感じています。BIM導入を機に一貫構造計算ソフトをBUSに乗り換える構造設計者も多いのではと思っています。御社製品のBIM対応について、教えて下さい。

「弊社の一貫構造計算ソフト『構造モデラ―+NBUS7』のBIM対応についてご紹介します。
 上記で説明した『構造モデラー+Revit Op.』は、Autodesk社のBIMソフト『Revit』とBUSの後継製品である『構造モデラー+NBUS7』をダイレクトに双方向連携し、かつRevitファイルのみで構造計算データも一元管理できるソフトです。データの変更はRevitでも構造モデラ―+NBUS7でもどちらでも行え、一回のデータ変更でどちらのモデルにも反映することができます。データ変更の省力化や整合性チェックの省力化、データ管理の簡略化などのメリットがあります。

 また、『構造モデラー+NBUS7』の機能として、ST-Bridge形式のファイルの書き出しに対応しておりますので、ST-Bridgeファイル経由で様々なBIMソフトと連携することが可能です。」

 詳しくはこちらの動画をご覧ください。






今後、BIMは構造設計者にとって、必須のツール!

─ BIMが定着すると2Dの紙の図面は無くなり、施工者も3Dデータを画面上で見る事になるのでしょうか。

「現在、現場では皆さんタブレットをお持ちで、タブレットで図面の確認などが行われていると聞きますので、すでに紙の図面はなくなりつつあるように感じます。さらにBIMが定着することにより、 一層紙への依存はなくなり、3Dデータをタブレット等の画面で見ることになっていくと思います。」


─ BIMが一般にも定着するのは、どのくらい先になるのでしょうか。BIMは構造設計者にとって、必須のツールになるのでしょうか?

「国土交通省は2025年にBIM申請を試行すると発表しましたので、これからBIMの動きは加速していくと思います。導入費用や技術習得・運用の方法など課題は多数ありますが、BIMは構造設計者の方々にとって作業の効率化などのメリットが大きいという理解が広がっていけば、一層加速するのではないかと思います。」



─ 確かにBIMが構造設計者にとって、必須のツールになる時代が近いうちに来るのを感じています。お話を聞いて、BIMのメリットも理解できました。私もBIMに取り組んでみたいと思います。
 本日はありがとうございました。



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