鉄骨造の露出型固定柱脚を徹底比較!

 

 
P投げ銭!

令和4年1月13日

 鉄骨造の構造設計には欠かせない大臣認定露出型固定柱脚。1972年に日立金属機材(現、センクシア)より「ハイベース工法」が発売されました。1986年には「ベースパック工法(旭化成建材、岡部)」が追随しました。

 1996年に発生した阪神・淡路大震災の影響による設計基準の改正で大臣認定露出型固定柱脚の使用は事実上、必須となりました。

 その後、NCベース(日本鋳造 ※JFEグループ)、ジャストベース(コトブキ技研工業)など多くの大臣認定露出型固定柱脚工法が出てきました。


 以前はハイベースか、ベースパックのどちらを考えれば良かったのですが、このように多くの製品があるとその採用に迷うところです。

 そこで、どの大臣認定露出型固定柱脚工法が良いのか、徹底比較をします。尚、比較はハイベース、ベースパック、NCベース、ジャストベースを中心に行います。


【目 次】
  1. バリエーションを比較する

  2. 一貫構造計算プログラムの対応状況

  3. 回転バネが一番大きいのは?

  4. コストパフォーマンスが一番良い柱脚工法

  5. ナンバーワン柱脚工法は!?




バリエーションを比較する

 構造設計者が露出型固定柱脚を選択する際、最も重視するのがバリエーションの豊富さでしょう。柱脚に限らず、バリエーションの少ない工法は使いづらいものです。

 最も使用が多い角形鋼管について、各工法の対応状況を以下に示します。

 角形鋼管においては最も多くのバリエーションがあるのは各柱サイズに対し、アンカー4本、8本、12本のタイプがあるNCベース(日本鋳造 ※JFEグループ)です。ハイベース、ベースパックも当然、通常使われる範囲は全てカバーしています。 ジャストベースは1種類のみとなっています。

 他の鋼材については円形鋼管柱はジャストベース以外は対応しており、ハイベース、ベースパックはH形鋼についても対応しています。ハイベースについては偏心タイプ、SRC造用もあり、トータルで最もバリエーションが多いのはハイベースでしょう。

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一貫構造計算プログラムの対応状況

 次に構造設計者が重視する点としては、一貫構造計算プログラムの対応状況です。やはり、一貫構造計算プログラムが対応していない製品は使用しずらいものです。

 
プログラム名 登録製品名
ユニオンシステム
SS7
・ハイベース(センクシア)
・ベースパック(岡部、旭化成建材)
・NCベース(日本鋳造)
・ISベース(アイエスケー)
・日鉄Eベース(日鐵建材工業)
・ジャストベース(コトブキ技研)
・フリーベース(フルサト工業)
・スマートベース(東京鉄鋼)
構造ソフト
BUILD.一貫V
・ハイベース(センクシア)
・ベースパック(岡部、旭化成建材)
・NCベース(日本鋳造)
・ISベース(アイエスケー)
・ジャストベース(コトブキ技研)
・スマートベース(東京鉄鋼)
構造システム
NBUS7
・ハイベース(センクシア)
・ベースパック(岡部、旭化成建材)
・NCベース(日本鋳造)
・ISベース(アイエスケー)
・ジャストベース(コトブキ技研)
・フリーベース(フルサト工業)

 三大一貫構造計算プログラムの全てに登録されているのは、ハイベース、ベースパック、NCベース、ジャストベース、ISベースです。おそらく、これらが一番シェアも多いと言うことでしょう。

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回転バネが一番大きいのは?

 鉄骨造の構造設計では層間変形が支配的になることが多くあります。回転バネが大きい露出型固定柱脚では設計も有利になります。代表的な角形鋼管に対し、回転バネ(kN・m/rad)の比較をします。

 
製品名 ハイベース ベースパック NCベース ジャストベース
□-250×250×12
(BCR295)
32,200
EB250-4-24
49,000
25-12V
45,200
PS-250-4S-27
47,000
J250-12K
□-300×300×16
(BCR295)
70,100
EB300-4-30
114,000
30-16V
56400
PS-300-4S-27
89,000
J300-16K
□-400×400×19
(BCP325)
234,000
GB400-8-36
299,000
40-19P3
145,000
PK-400-8S-30
207,000
J400-19K
□-500×500×22
(BCP325)
354,000
GB500-8-36
486,000
55-22P3
266,000
PK-500-8S-30
379,000
J500-22K

 これによるとベースパックが比較的に回転バネが大きく、層間変形に対しては有利に設計できそうです。

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コストパフォーマンスが一番良い柱脚工法


 コストを比較してみます。金額は「建築施工単価(2022年冬号)」より、掲載しています。

 単純に金額だけを比較するとハイベースが一番コストが低くなっています。そして、コストパフォーマンスを比較するために( )内に回転バネ当たりの金額を記載しました。 これによるとベースパックのⅠ型、ハイベースの鋳鋼製(Gタイプ)のコストパフォーマンスが優れているとの結果になっています。ハイベースのエコタイプはコストを抑えるために鋼板製としていますが、 結果としては逆のようです。

 
製品名 ハイベース ベースパック NCベース ジャストベース
□-250×250×12 97,000
(3,012)
EB250-4-24
112,700
(2,300)
25-12V
124,000
(2,743)
PS-250-4S-27
114,300
(2,432)
J250-12K
□-300×300×16 122,500
(1,748)
EB300-4-30
184,700
(1,620)
30-16V
139,000
(2,465)
PS-300-4S-27
162,100
(1,821)
J300-16K
□-400×400×19 251,000
(1,073)
GB400-8-36
321,900
(1,518)
40-19R
247,000
(1,703)
PK-400-8S-30
291,800
(1,410)
J400-19K
□-500×500×22 341,000
(963)
GB500-8-36
525,800
(1,082)
50-22R
332,000
(1,248)
PK-500-8S-30
476,700
(1,258)
J500-22K

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ナンバーワン柱脚工法は!?


 以上より、最も効率の良い露出型固定柱脚の選定方法は以下となります。


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