構造設計事務所、独立するには何年かかる?
   

   
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令和元年10月5日

「いつかは独立!」と思っている構造設計者も多いでしょう。構造設計事務所を設立、独立するには、様々なものが必要です。
 ・開業資金
 ・資格
 ・構造設計技術
 ・客先、設計の受注
 その他、事務所経営のための知識も必要です。建築構造設計会議室では、孤独に耐えられる精神力なんてものもありました。

 これらの準備が出来る、その『いつか』は、どのくらいなのかを調べてみました。

 調査方法としては、建築構造設計べんりねっとの「構造設計事務所リンク」に登録されている約400社のうち、代表者経歴が記載されている約90社について、集計しました。 調査項目としては、大学(大学院)の卒業年、独立年、年数及び想定の年齢、独立前の前職(経歴)について、まとめました。




インターネット調査によると独立するのにかかる年数は平均で12年


※クリックするとPDFデータにて、全データが見れます。

 調査結果としては平均12.4年、年齢としては36.4歳です。大学卒業と同時に構造設計事務所を開設した方も居ますが、短い人で3年です。長い人では30年を 超える人も居ますが、これは前職の定年後に設計事務所を開設したのでしょう。

 確かに12年のキャリアがあれば、十分な構造設計技術を身に付けることが出来るでしょう。それなりの人脈も築けており、仕事も確保できるでしょう。開業資金を貯めるのにも十分です。
 もう少し、詳細に分析してみます。

構造設計一級建築士を取得するには最短、学部卒で9年、大学院卒で7年かかる

 構造設計事務所を開設するにあたっての絶対に必要な条件は資格です。これがなければ、建築士事務所として、業務が出来ません。二級建築士で大学を卒業した年、一級建築士で大学卒業後、3年がかかります。建築士事務所を開設するには短くても、この年数が必要です。 しかし、構造設計事務所として、業務を行うには構造設計一級建築士は必ず、必要です。これがないと小規模な建物の設計しか出来ず、事務所経営としてはかなり、厳しいです。この構造設計一級建築士を取得するには最短、大学学部卒で9年、大学院卒で7年が必要です。

 構造設計一級建築士制度が決まった平成18年(2006年)以降に構造設計事務所を開設した38社のうち、30社(79%)が7年以上となっています。尚、2006年以降の平均では、13.4年、37.4歳となります。構造設計 一級建築士制度の影響で独立するのにかかる年数が若干、伸びています。



アトリエ構造設計事務所出身は独立が早い

 今回、調査出来た中では、アトリエ構造設計事務所出身者が44%となっていました。一方、一般の構造設計事務所出身者はわずか、8%でしたが、 実態としては半数以上が一般の構造設計事務所出身者でしょう。
 事務所ホームページに代表者経歴を記載するのは、自分の経歴をアピールしたいとの理由があると思います。有名大学卒業、有名構造設計事務所や大手ゼネコン出身など。 調査が出来た事務所についても金箱構造設計事務所、佐々木睦朗構造計画研究所、梅沢建築構造研究所など、有名ないわゆるアトリエ構造設計事務所出身の方が多く居ました。
 そこで独立までの経歴別に分析します。

 アトリエ構造設計事務所出身者に絞ってみると独立までの年数は平均9.5年、年齢は33.4年となっています。全体平均よりも3年ほど、早く独立しています。 やはり、アトリエ構造設計事務所に勤める人は基本的に独立志向が高いことが要因です。早くから、独立を考え、そのための行動を行っています。
 また、たくさんの建築家との仕事をする中で同じように独立志向の高い若手建築家とも知り合う事が多く、これらの建築家からの仕事の依頼があることより、 早くから独立に踏み切ることが出来ます。


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 ゼネコン、大手総合設計事務所出身者に限ると独立までの年数は平均18.3年、年齢は42.3歳と全体平均よりも6年ほど、長くなります。ゼネコン、大手総合設計事務所 となると比較的に大きな建物の構造設計も多く、収入も高い方であるので、独立との考えも少ないのでしょう。定年後に構造設計事務所を開設される方も多くいます。

 尚、アトリエ構造設計事務所、ゼネコン、大手総合設計事務所出身者を抜き、2006年以降とすると平均12.6年、年齢36.6歳となります。結果として、全体平均と 同じ程度です。


まとめ

 構造設計事務所開設、独立に必要なものの中で開業資金は数百万円で済みますので、5年もあれば容易出来るでしょう。 資格(構造設計一級建築士)についても普通に仕事をして、資格学校に通えば、10年程度で問題なく、取得できます。

 問題は構造設計技術です。これがないと致命的です。これは、どのレベルまで習得出来ていればと言う判断は難しく、ましてや、自分で自分の事を 適正に評価するのも難しいでしょう。ですが、平均12年の経験があれば、概ね、構造設計事務所として、業務を行う事が出来るレベルのスキルを 見つけられるとの結果となっています。

 そして、最も問題なのは、安定した仕事先の確保です。一般には、退職した会社・事務所からの依頼、前職で付き合いのあった会社からの依頼、 閉鎖する事務所の仕事を引き継ぐ、知人の会社からの依頼などがありますが、なにぶん、タイミングに左右されます。独立志向があるのであれば、 その他の準備をしっかり行い、タイミングを待つ事になります。確率的には10~15年の期間にそのタイミングが一、二度は起こるという事です。

 どちらにしても、「いつ、独立できるか」は本人次第です。そのための努力と準備を十分に行うことです。

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