検討するのは時間の無駄?結局、採用されない構造工法5選!

 

 
P投げ銭!

令和5年1月29日

 建築構造の分野にも様々な工法、構法があります。もちろん、どんな建物にも万能な工法などはなく、適材適所で使用する必要です。クライアント、その他からの提案でこのような工法を検討を行ったが、結局、その工法を採用しなかったと言うことも少なくないでしょう。一番の理由はコストでしょうか。中にはメーカーに問合せをすると「どうせ、使わないんでしょ」的な対応をされるものもあります。

 検討を行っても結局、採用されない事が多い構造工法を5つ選びました。



【目 次】
  1. ダイアフラム不要の柱はり接合工法(ノンダイアフラム工法)

  2. ボイドスラブ工法

  3. 中高層木造、CLT工法

  4. 狭小地のアースアンカー工法

  5. 免震構造



ダイアフラム不要の柱はり接合工法(ノンダイアフラム工法)

「この工法を使用すれば柱はり接合部の納まりで鉄骨部材のサイズを調整する必要がなくなり、最小の断面で設計出来ます。」

 鉄骨造における所謂、ノンダイアフラム工法です。

 鉄骨造における柱はり接合部はH形鋼梁のフランジ位置にダイアフラムプレートを配置します。柱の左右、直交方向で梁せいが違う場合、複数のダイアフラムを取り付ける事になりますが、この間隔が狭いと製作が出来ません。よって、梁部材の選定においては柱はり接合の納まりを考慮する必要があります。

 これに対し、柱はり接合部に厚肉の鋼管部材を使用し、フレキシブルに梁を接合できる工法がノンダイアフラム工法です。梁の経済的な設計ができる、加工・製作が容易になるなどのメリットがあります。

 このような提案を鵜呑みしては言えません。積算をしたら、結局、高い。何が高いかと言うと柱はり接合工法が高いとなるのです。

 鉄骨造の大梁を設計する上で柱はり接合部の納まりを検討する手間が省ける、そして、コストも安い。そんな都合の良い工法は存在しません。もし、あるとしたら、世の中のほとんどの鉄骨造に使われているはずです。

 待っているのは設計のやり直しです。

 もちろん、条件によってはコスト面でのメリットが出る場合もあるでしょう。また、設計の自由度も増えるでしょう。しかし、当然ながら万能ではありません。

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ボイドスラブ工法

 通常、RCマンションでは小梁の梁形が室内に出ます。よって、意匠設計者が間取りを検討する際は小梁位置が壁際になるように考えます。しかし、何処に小梁を通そうにも何処かの部屋の中央に小梁が出てしまう間取り。。。

 こんな時に意匠設計者から、ボイドスラブを採用して欲しいとの提案を受ける場合があります。中には「ボイドスラブを知らないのか。」と偉そうに言う意匠設計者も。。。

 コストに見合うだけの魅力的な間取り、プランであれば良いでしょう。しかし、普通の設計者にそこまでの設計は出来ません。建築とは様々な取り合いを納めて成立させるものです。それを行わないのは建築ではなく、ただのお絵描きです。

 これも同じく、積算をしたら、高いとなる事が多い工法です。特に通常ない積算項目なので目に付きます。
 当然、重量増となるので、その影響は柱、大梁、基礎(杭)にまで及びます。積算を行い、高いとなった場合、構造設計者も原因をボイドスラブ採用による荷重増を上げるでしょう。このような経緯で結局、採用されない事となります。

 木質ラーメンなども同様です。在来工法(軸組壁工法)に比べ、上下階の取り合いを考えることが少なくなり、プランは自由になります。このような設計の手間が少なくなるような工法、製品は往々にしてコストが高いものです。

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中高層木造、CLT工法

 近年、環境意識への高まりから、木質構造が注目されています。従来、鉄骨造やRC造としていた建物も木造で作られることが増えてきました。CLT構造も誕生しました。
 しかし、問題はRC造よりも高くなってしまうコストです。補助金があっても同等になることはありません。

 SDGsのバッジを付けたクライアントより、「環境に負荷をかけたくないので構造は木造としたい。コストが高いのは分かっている。しかし、環境問題に取り組まない企業は衰退してしまうのだよ。もちろん、出来る限り、経済的な設計をお願いしたい。」 との依頼。。。

 総合的に考え、RC造を提案したいと思っても、環境問題を出されると反論が出来ない。環境問題の重要性は認識しているが、現在では中高層木造とするのは現実的でない事も多い。

 中高層耐火木造となると設計環境(設計指針、プログラム等)の整備も不十分であり、設計にあたっては多くの手間がかかります。設計が完了し、積算をするとやはり、高い。。。


 結果、クライアントからは「環境負荷を軽減することは重要だが、当社も事業会社であるため、事業性を考え、今回は木造を断念したい。次回は木造で行いたいので是非、その時はお願いしたい。」

 変更の設計料も十分に貰えず、設計のやり直しとなります。次は仕事を受けませんと考えるでしょう。
 環境問題を考えた場合、建物の木質化は重要です。しかし、これには初期計画段階から、十分な説明とクライアントの理解が必要です。

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狭小地のアースアンカー工法


 高層となる構造物では引抜き、転倒の対策として、アースアンカー工法が採用されることがあります。

 郊外駅前の狭小地、周辺は3、4階程度の建物しか建っていない場所に突如、10階建を計画。極端なペンシルビルとなる無謀な計画です。当然、かなりの塔状比になり、大きな引抜き力が発生します。杭は大型の重機が使えず、杭仕様に制限がかかります。
 建物を成立させるためには引抜き力処理が必要であり、アースアンカー工法の概算検討を専門工事会社に依頼したところ、「今、依頼が多くて検討には3ヶ月かかります。」との回答。
 それでは確認許可が遅れてしまうと思いつつも、他に手立てがなく、結果を待ったところ、高額な見積りが。。。

 おそらく、実際はもう少し安いでしょう。それでも、コストは追い付きません。この見積りは「どうせ、やらないんでしょ。」との意味です。「検討に3ヶ月かかる」と言うのも、結局、「やらないものに時間と労力をかけたくない、諦めて下さい。」との意味です。

 このような回答を得た時は現実的でない計画であることを認識しましょう。

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免震構造


検討するのは時間の無駄、結局、採用されない構造工法の中で最も多いのは免震構造です。

 免震構造の性能の優位性は一般の方にも知られています。よって、クライアントからも免震にしたいとの要望が出ることも少なくありません。特に大きな地震が起きた後は免震構造の要望が増えます。

 当然の如く、コストは上がります。それはクライアントも分かっています。問題はどのくらいかですが、計画、積算、見積提示をしないと判断が出来ません。設計側も大きな負担となります。 また、免震のクリアランス(可動域)のために建物の大きさが小さくなることも結局、採用されない原因の一つです。

 ある免震工法を扱う会社は過去に取引のない会社からの概算見積依頼に対し、費用を要求する所もあります。これは結局やらない案件に多くの手間を割くことは出来ないとの意味です。 それだけ、検討だけで採用されない工法であることなのです。

 免震に対し、制振についてはクライアントから要望が出ることは多くはありません。制振に対しては理解が少ないからでしょう。

 免震構造の計画にあたっては必要性について、クライアントとよく協議を行い、進めることが必要です。


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