建築構造の地震対策として、「耐震」、「免震」、「制振」と区分されることが良くあります。どれも「地震に耐える」と言う広い意味では全て、耐震構造、耐震技術です。 そして、今までにも様々な工法が開発されましたがちょっと変わった新耐震技術を紹介します。
平成17年から販売されている工法であり、様々なメディアでも取り上げられているのでご存じの方も多いでしょう。
AIR断震システムは地震の揺れをセンサーが感知して、エアータンクから基礎下に空気を送り込み、建物を宙に浮かせ地震の揺れを建物に伝えづらくする工法です。
エアー免震と呼んでいた時期もありますが、免震構造は積層ゴムアイソレータなどを履くことによって建築物の固有周期を長くすることで応答する地震力を小さくすることを目的としています。本工法は免震とは違うものと考えられます。現在は“断震”と言う言葉が使っており、性能的には他の免震構造と比較しても優れたものがあるでしょう。
地盤面から浮いていれば建物は地震動を受けることはありません。“浮かせる耐震工法”は誰もが考える事と思いますが、それを実施したのは素晴らしい。
以前、空気層の防耐火仕様に課題があると聞いたことがありますが、改善出来ているのでしょうか。平成31年には国土交通大臣認定も取得しているようですが「AIR断震を用いた木造住宅(試験住宅)における構造方法」となっており、個別認定でしょうか?
問題的としては作動には電気が必要であること、また機械であるため、定期的な点検、メンテナンスは必要なことでしょう。
平成27年に鋼管杭メーカー三誠ホールディングスのグループになっており、施工店も増えているようなので今後、更に拡大する可能性があります。
耐震塗料?塗るだけで耐震化?ペンキ?これを聞いただけだと非常に胡散臭い感じがします。
しかし、違うのです。この技術は「世界の地震犠牲者ゼロを目指す。」と言う高い理念より、開発されたものです。
途上国では組積造が未だに多く存在します。5万人を超す人が亡くなった2023年に発生したトルコ・シリア大地震でも組積造の崩壊が関係しています。こうした組積造の建物に対し、大掛かりな工事でなく、繊維強化塗料を壁に塗るだけで耐震性を向上させるものとして開発されたものが耐震塗料「Aster Power Coating」です。
「Aster Power Coating」はアクリルシリコン樹脂を基材にグラスファイバーを混合した塗料です。この材料は柔軟性があり、変形追従性能の向上をさせます。耐震補強工法として炭素繊維を巻く工法がありますが、それとは違った効果を狙ったものです。
この塗料は東京大学在学中の山本憲二郎氏と当時建設会社の二代目だった鈴木正臣氏が設立した株式会社Aster(アスター)と言うスタートアップ企業が販売しています。新しい耐震技術と言うと大規模な建物を想像しがちですが、このように途上国の地震被害を撲滅するための技術開発も非常に意味があるものです。今後の活躍に注目したいと思います。
<参考記事>
https://ipbase.go.jp/learn/ceo/page46.php
https://www.technologyreview.jp/s/331815/developer-of-new-coating-aims-to-reduce-earthquake-damage-in-developing-countries/
基礎下減震システムは基礎と捨てコンの間にフッ素樹脂によるすべりシートを敷設し、建物に入力される地震動を小さくする効果を狙った工法です。ビイック株式会社が開発した耐震技術になります。
同社のホームページによると「震度7クラスの地震動に対し、建物の揺れを震度5程度に低減することができる」とありますが、効果を定量的に評価するのは難しいのではと思います。この工法は耐震・免震・制振等ではなく、減震と言う表現を行っていますが、免震ほどの効果は見込めないとの意味のあるのでしょう。
免震との最も大きな違いは価格(コスト)と説明しています。効果も価格並み?
尚、「基礎下減震システム」の適用建物は4号建築物(建築基準法第6条)となっていますが、2025年建築基準法改正後は木造平屋200㎡以下になってしまうのでしょうか。
各住宅メーカーの耐震技術、構造工法をジョブチューン風にをジャッジします。
検討を行っても結局、採用されない事が多い構造工法を5つ選びました。
一般的には「建築基準法の構造関連規定は過去の大地震がきっかけで改正、強化されてきた」と言われていますが、本当でしょうか?基準改正の背景について解説します。
『建築構造設計べんりねっと』調査による構造設計事務所ランキング「日本の最大手構造設計事務所はどこか?」