

先日、日経クロステックの記事で一級建築士試験の問題をChat GTPに解かせたら、正答率91%、合格レベルになったとあった。正答率が上がった要因は図表(画像)の認識が出来るようになったことらしい。
そこで、Chat GTPに構造設計一級建築士の修了考査問題を解かせてみた。
一級建築士の問題は四肢択一式であるが構造設計一級建築士の問題は理由記述付き4肢択一、記述式の問題です。記述による解答はChat GTPの得意な所だと思う。
今回は5問(構造設計科目3問、法適合科目2問)をChat GTPに解かせてみる。5問中、4問正解で合格とする。尚、画像を認識させる方法が分からないため、文章のみの問題とした。
【第1問】 耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
解答は「2」
【不適当とする理由】
液状化現象は地震による間隙水圧の上昇によって有効応力が消失し、せん断強度を失うことによって発生する。したがって、「間隙水圧が低下し」という記述は誤りである。
いきなり、不正解?
Chat GTPは「2」の液状化現象について、「間隙水圧が低下」の部分が間違いだとしています。確かに日本建築学会「建築構造基礎設計指針」に記載があるように、間隙水圧が低下ではなく、上昇が正確です。
模範解答では、この問題の正解は「3」であり、理由は「保有水平耐力は崩壊系が形成される時ではなく、最大耐力に達した時、最大層間変形角に達した時である。」となっています。しかし、崩壊系が形成される=最大耐力だから、解答に不足はあるが完全な間違いではない。
問題は最も不適当であるから、正解が「3」とされているが、明らかな間違いは間隙水圧が低下の記載である。
この問題について、模範解答を示し、再度、質問したが結果は同じ。Chat GTPは自信を持って、同じ解答。最も不適当なものを選ぶ問題は問題作成者、解答者の主観にも左右されます。このように人間っぽい曖昧さは、AIは不得意です。まあ、技術・工学は曖昧であってはならないものと思いますが。
この問題は個人的には正解としてあげたい。
【第2問】
木質構造の構造設計等に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当する理由を述べよ。
解答は「2」
【不適当とする理由】
剛性率が0.6以下となる場合、構造種別に関係なくFs(剛性率割増し係数)を用いた評価が必要である。1階が鉄筋コンクリート造であっても、木造階の剛性が小さすぎれば、地震時の変形集中や倒壊リスクが増すため、割増しを無視することはできない。
正解!
模範解答による理由は「鉄筋コンクリート造、木造のうち、2層にわたる部分に限り、剛性率を確認する。(告示第593号第3第4号)」であるが、Chat GTPの解答も悪くない。
【第3問】
免震構造・制振構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
解答は「1」
【不適当とする理由】
制振ダンパーの接合部は、ダンパー本体のエネルギー吸収性能を確実に構造体へ伝えるために、高い剛性・強度が必要であり、剛性を小さくするのは逆効果である。この記述は構造設計の基本的考え方に反する誤りである。
正解!
模範解答による理由は「制振部材周りの架構の曲げ変形成分が卓越してしまい、層のせん断変形比率が下がり、ダンパーの利きが低下する。」であるが、Chat GTPの解答も良いでしょう。
【第4問】
建築基準法及び建築士法における構造関係規定の位置づけに関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
解答は「3」
【不適当とする理由】
土砂災害防止法における特別警戒区域の建築規制は、「居室を有する建物」に限定されず、その用途・規模・位置に応じて広く適用される。よって、この記述は適用範囲を狭く誤って表現しており不適当である。
不正解
これは構造設計一級建築士を受験する人にとってはサービス問題であり、正答率が高い問題かと思う。残念。
確かに技術基準解説書には「居室が存在する可能性がある工場、倉庫にも適用する。」とありますが、最も不適当は明らかに「4」でしょう。尚、Chat GTPに間違いであることを指摘し、再度、問題を出したら正解しました。これは学習したと言うことでしょうか。
【第5問】
鉄筋コンクリート造建築物の耐震計算ルート3において、梁曲げ破壊型ラーメン構造では、柱梁接合部のせん断終局耐力が崩壊形を形成する時の作用せん断力を十分上回ることが求められる。十字形柱針接合部の耐震性を向上させる対策として、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
解答は「2」
【不適当とする理由】
梁幅の縮小は、接合部せん断耐力の低下や鉄筋定着の問題を引き起こし、接合部の耐震性を劣化させる。十字形柱梁接合部においては、十分な梁幅が構造的に必要不可欠であり、この対策は構造設計上、明らかに不適当である。
正解!
これは問題なく正解。
結果は5問中、4問正解です。Chat GTPに構造設計一級建築士の修了考査を合格(修了)できると言って良いでしょう。
構造設計AIに関するニュースとして、6月24日に大林組が「断面設計を自動で行う構造設計支援AIプログラムを開発した」と発表しました。
ニュースリリースを読むと構造計画を与えると自動設計を行うものらしい。これにより、複数の構造計画による比較検討が可能であり、例えば、より経済的な設計が可能になる支援プログラムである。尚、構造種別は部材が規格化されている鉄骨造のみとなっている。
このAIは一次設計のみなのか、保有水平耐力まで検討するのか、また、設計上、どの程度までの設計対応が出来るのかは不明であるが、あくまで構造設計支援AIであろう。
他にもAIによる構造設計を謳っているシステムはあるが、「この建物は全て、AIで構造設計しました。」との話は聞いたことがない。AIで建物全ての構造設計が出来るようになるのは出来ないかもしれない。かなり前より「AIにより無くなる仕事」と言われたものが現在もほとんどが残っていることがAIの限界を示している。
建築の資格制度は建物の品質を保つために設計者に一定の技量、知識を求めるものである。そして、このようにChat GTP、AIは一級建築士、構造設計一級建築士の試験に合格できるレベルになっている。
設計した建物の図面、計算書をAIで審査することを出来るようになるのも近いのではないか。するとAIにより、構造適判員、確認審査員は不要になる可能性はある。審査は設計ではないので不適切であった場合の対処を考える必要はないのでAIで対応が可能と考える。
問題は図面と計算書を正確に関連付けることであるが、BIMにより設計が行なわれたものであれば可能になると思う。
建築構造設計でのAIの活用方法として、他の仕事でもそうであるようにAIエージェントと利用することは現実的に可能ではないでしょうか。
現在は構造設計を行っていて、分からないこと、判断に迷うことがあると各種構造設計指針を調べます。これをAIに聞けば、正しい答えが帰ってきます。一級建築士、構造設計一級建築士に合格できるレベルになっているので問題ないでしょう。これに近いものとし、大成建設が開発したAI設計部長があります。スーパーゼネコンが開発したものなので、一般に使えるChatGTPよりも高いレベルで対応出来ているでしょう。
尚、AIに質問するにも聞き方が重要です。聞き方が悪いと適切な回答とならない場合があります。しかし、これはAIの問題ではなく、ユーザーの問題です。今でも、何を聞きたいのか分からない質問をする人には適切な回答は出せないでしょう。
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