構造設計の最上級資格“構造適判員”になるには│受験方法、難易度、合格率

令和3年7月22日公開、令和4年1月22日更新

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 構造設計に関する最上級の資格は構造設計一級建築士と言われています。一定規模以上の建物の構造設計には構造設計一級建築士の関与が法律で義務付けられています。

 実は構造設計に関する資格として、構造設計一級建築士よりも上の資格があります。それは構造計算適合判定資格者です。私達構造設計者は一般に(構造)適判員と呼んでいます。



構造計算適合性判定員とは


 構造設計者であれば、ご存じの通り、一定規模以上の建築物(超高層建築物以外の建築物で、法20条第2号及び令第36条の2第1号から4号までに規定されている建築物のほか、令第36条の2第5号に基づく告示593号に定められている建築物)は構造計算適合性判定が必要となります。
 姉歯元建築士をはじめとする構造計算書偽装事件等を受けて、平成19年6月20日から導入された制度です。別の構造設計者によるピアチェック(二重チェック)との意味もあります。
 この構造計算適合性判定の審査を行う技術者が構造計算適合性判定員と呼ばれ、そのための資格が構造計算適合判定資格者です。

 建築主に交付される適合判定通知書には構造計算適合性判定員の氏名も記載されます。

  

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なぜ、構造設計一級建築士よりも上?

 構造計算適合判定資格者が構造設計一級建築士よりも上である理由は以下です。


 構造計算適合判定資格者(適判員)は適判審査をするための資格、構造設計一級建築士は構造設計を行うための資格であり、別物である、構造計算適合判定資格などは不要と考える人も居るでしょう。もちろん、構造計算適合判定資格者(適判員)以上の能力を有していて、構造計算適合判定資格者(適判員)の資格を取得していない構造設計者も多数居ます。

 ですが、構造計算適合判定はピアチェックとの側面があり、一般の構造設計者でも構造計算適合判定資格者(適判員)である人も多く居ます。一般の構造設計者でも取得ができる資格です。

 今すぐに構造計算適合判定業務を行わなくても、先が見えないコロナの時代に役立つ時が来ることもあると思いますので是非、取得しましょう。

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構造計算適合判定資格者の取得方法

 平成27年建築基準法改正で構造計算適合判定資格者検定制度の創設されました。

【受験資格】

 構造計算適合判定資格者の受験資格は建築基準法第5条の4第3項にて、以下と定められています。

 受検資格者は、一級建築士試験に合格した者で、以下の業務に関して、合計5年以上の実務の経験を有する者に限ります。
(1) 法第6条の3第1項の構造計算適合性判定の業務
(2) 建築士法(昭和25年法律第202号)第2条第7項に規定する構造設計の業務
(3) 法第6条第4項若しくは法第18条第3項に規定する審査又は法第6条の2第1項の規定による確認のための審査の業務(法第20条第1項に規定する基準に適合するかどうかの審査の業務を含むものに限る。)
(4) 建築物の構造の安全上の観点からする審査の業務(法第6条の3第1項の構造計算適合性判定の業務を除く。)であって国土交通大臣が同項の構造計算適合性判定の業務と同等以上の知識及び能力を要すると認めたもの(平成27年国土交通省告示第179号として規定)

 受験資格として認められる実務経験は分かりやすくまとめると以下になります。

  1. 構造計算適合性判定の補助員としての業務
  2. 通常の構造設計業務(規模は問わず)
  3. 建築主事または確認検査員として建築物の確認のための構造審査業務(補助員を含む)
  4. 住宅性能評価における構造の安定に関する評価業務

 確認検査機関、適判機関で業務を行っていなくとも一級建築士として、構造設計を行っていれば受験資格があります。構造設計一級建築士である必要もありません。
 尚、構造設計の業務については「基礎伏図、構造計算書その他の建築物の構造に関する設計図書で国土交通省令で定めるものの設計」となっており、工事監理業務は含まれません。

【試験内容】

区分 形式 配点 内容
考査A 多肢択一式問題25問 100点 法第6条の3第1項に規定する特定構造計算基準及び特定増改築構造計算基準に関する知識
考査B 記述式問題5問 150点 構造設計例より、不適切な部分を指摘

 平成30年度の考査問題はコチラ

【試験日程】

 構造計算適合判定資格者検定は3年ごとに実施され、平成27年度、平成30年度(2018年)に行われています。次回は令和3年(2021年)です。

●申 込 み:9月15日(水)~10月15日(金)
 ※申込書は各都道府県建築士会で配布しています。
●試 験 日:12月8日(水)
●合格発表日:未定



【その他】

●検定地:東京、大阪、福岡
●受験料:34,000円
●主 催:一般財団法人 日本建築防災協会

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構造計算適合判定資格者検定の難易度、合格率

 構造計算適合判定資格者検定の過去2回の合格率は以下になります。

年度 受験者数 合格者数 合格率 合格点
平成27年度 748名 164名 22.4% 167点
平成30年度 574名 172名 30.0% 167点
令和3年度 481名 135名 28.1% 167点

 過去3年の構造設計一級建築士の合格率が約35%ですので、やや難易度が高い結果となっていますが、過去の考査問題と見た限りでは構造設計一級建築士で普通に構造設計を行っている 構造設計者であれば特別な対策をしなくとも合格できるレベルです。

 ※令和4年1月22日、令和3年度結果追記

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現在の構造計算適合性判定員の人数は?

 構造計算適合判定資格者検定は平成27年建築基準法改正により制度化されましたが、構造計算適合判定は平成19年6月より、開始しています。これに合わせ、3回の構造計算適合性判定員の試験が行われ、2519人が合格しています。

 平成27年、平成30年の追加により、現在の構造計算適合性判定員の人数は2855人です。

  合格発表日 受験者数 合格者数 合格率 備考
第1回 平成19年4月3日 3354 1315 39% 一般受験者
244 244 100% 大学教授等
追試 平成19年5月11日 411 246 60%  
第2回 平成19年9月21日 1232 395 32%  
第3回 平成20年2月29日 1350 319 24%  

 構造計算適合性判定の年間件数は15000件弱であるため、十分な人数が確保されているようですが、実際は業務を行っていない人が殆どであり、各適判機関も判定員の募集を行っています。
 まだまだ、十分に需要がある資格と言うことです。

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