“構造設計の品質”を考える上での要素として、安全性、耐久性、生産性、経済性、法適合があります。最近では環境性能も求められています。
どれが欠けてもならない訳ですが、その優先順位はどうでしょうか?
おそらく、法適合、つまり、各種の基準を守る事が第一優先で次に安全性、耐久性でしょう。
施工性、経済性(コスト)についてはどうでしょうか?
「施工出来る方法を考えるのは施工者の仕事」、「コストを考えるのは積算の仕事、我々は基準に従い、最小限の構造設計をするだけだ。」と考えている人が多いのではないでしょうか。さもすると経済性(コスト)のウエイトが高い人を安全性を蔑ろにしていると批判する人も居ます。
安全性(耐震性能)、耐久性、法適合(各種設計基準)については構造設計者なら、誰でも自分の設計を説明できるでしょう。施工性についても多くの経験を積んだベテランの構造設計者であれば、「今まで、この方法で施工出来ている。」との実績から、判断、説明が出来ます。
経済性(コスト)についてはどうでしょう。
意匠設計者やクライアント(施主)から、複数の建物形状(=構造計画)の相談を受けた際、どちらの構造躯体数量が多いか、経済的かはある程度、判断が付くでしょう。
しかし、どちらが高い、安いだけでは意味がありません。
意匠設計者、クライアント(施主)は、「この形状をやりたい。だが、コストも気になる。」と考えます。高いと言うのは、1万円なのか、100万円なのか。その金額に応じて、判断するのです。
考えてみて下さい。私達が何か、物を買うときでも、店員さんにその違いを聞いて、金額を見て、購入するかどうか判断します。「性能、デザインの差はこの通りです。金額は分かりません。教えられません。」で買いますか?
建築の設計で言えば、「では、どれだけ、コストが違うかの比較を行うために2パターンの設計をします。それで積算してみましょう。期間は1か月掛かります。」でも良いのですが、概算でも即座に答えてくれる設計者の方が信頼されるでしょう。
もちろん、自分の構造設計についての安全性、耐久性を十分に説明できるのは当然です。
私達は芸術家ではなく、構造設計を仕事、ビジネスとしています。
金額、コストは重要な要素です。自分が設計するもの、提案するものに対し、金額(コスト)を説明できるべきではないでしょうか。
でないと、「気に入ったら、対価(設計料)を下さい。気に入らなければ対価(設計料)は不要です。」と言う芸術家になるか、ただ、労務を提供するだけの仕事になります。
私達は構造設計をビジネスとして、考えるのであれば、コストについて、もっと考えるべきです。明らかな不経済設計を指摘され、「安全側なので問題ありません。」 などと答える人はビジネスをするものとして論外です。
経済性(コスト)は建築構造の重要な性能です。構造設計を仕事にするのであれば、コストについて、説明出来るようになりましょう。『建築構造設計べんりねっと』にて、経済設計の手法、ポイントを説明します。