では各構造の経済設計手法の解説を始めます。まずはRC造の構造経済設計の基本を解説します。
鉄筋コンクリート部材はどの構造にもあるものであり、経済設計を考える上では欠かせません。
RC造における構造躯体工事は型枠工事、鉄筋工事、コンクリート工事になります。経済的な設計をするには、これらの単価や数量の構成を理解することが重要です。
解説は以下の建物を例にし、具体的なコスト効果を示しながら進めます。
言うまでもなく、RC造の構造躯体工事は型枠工事、鉄筋工事、コンクリート工事です。これらのコスト、比率を歩掛り、材工単価で計算すると以下になります。
躯体工事 | コスト (円/㎡) |
比率 |
型枠 | 24,750 | 46% |
鉄筋 | 14,400 | 27% |
コンクリート | 14,240 | 27% |
合 計 | 53,390 |
(コスト試算)
これから分かるのは上部構造躯体コストで最も多くを占めているのは型枠工事であり、約1/2となっています。つまり、RC造の構造経済設計、コストダウンをするには型枠数量を減らす事が最も効果的です。
これは各部材単位で考えた場合も同じです。まず、この事を頭に入れておきましょう。
以下はある共同住宅における部位ごとの型枠数量です。これから分かるように型枠数量が最も多い部位は壁です。
部位 | 数量(㎡) | 比率 |
柱 | 1220.5 | 7.7% |
大梁 | 1530.6 | 9.7% |
小梁 | 601.2 | 3.8% |
小梁 | 3408.2 | 21.6% |
壁 | 7659.4 | 48.5% |
その他 | 1359.6 | 8.6% |
合 計 | 53,390 |
RC造の経済設計には型枠が減らす事が効果的ですが、下図のように壁が取り付いている柱、大梁だと断面形状を変えても型枠数量は変わりません。(赤色で表示した部分と青色で表示した部分で相殺される。)
また、スラブ型枠は床面積で決まるので減らすことが出来ません。上部構造躯体コストで最も多くを占めているのは型枠工事を減らすには壁を減らすことが最も有効です。
では、どのように壁を減らすかと言うと以下の方法によります。
尚、前章で説明した通り、RC壁よりもサッシの方が価格が高いのでRC壁をサッシに変更するなどすると全体コストは上がってしまいます。また、コンクリートブロック壁やALC壁はRC壁よりも単価は安いですが、部分的に少ない数量で使用するとコストは逆に上がってしまうので注意が必要です。
RC造と架構形式としてはラーメン構造と壁式構造があります。どちらがコスト的に有利なのかを説明します。
壁式構造は、壁量が多い事が条件であるルート1と言う構造計算方法による必要があります。壁式構造は、その名前の如く、壁が多い構造です。共同住宅で考えた場合、通常のラーメン構造ではルート1の壁量を満足しません。
つまり、壁式構造はラーメン構造よりも型枠、コンクリート量が大きく、コスト的には不利になります。
また、コンクリート量が多いと言うことは建物重量が増え、基礎のコストも不利になります。更に壁式構造は各壁ごとに基礎(杭)が必要になり、荷重をあまり負担しない(性能をフルに使用出来ない)杭が必ず、発生してしまう事もコスト的に不利になります。
常識的なことでありますが、経済的なRC造の計画を行うには耐震壁の利用が一番、効果的です。散々、壁を無くせと書きましたが、耐震壁は別物です。
これは意匠計画に大きく左右されるものですが、耐震壁が利用出来そうであれば積極的に利用しましょう。
検討例の建物で妻側部分を考えた場合、耐震壁がないと、この部分の梁せいは850〜1000mm程度にはなるでしょう。正確には構造計算によります。
一方、耐震壁がある場合の梁せいは計算によらず、600mm程度となります。これだけのコスト効果があります。
外壁部分などは必ず、RC壁になる訳です。この壁にコストを掛け、構造スリットを配置し、非耐震壁とするような事は二重の無駄です。もちろん、全体バランスの確認は必要ですが。