コストを抑えた設計をするには杭に手を付けない訳にはいきません。やりようによっては一番、コストが下がります。
PHC杭については節付き、鋼管巻き、拡頭、拡底、そして強度区分と組合せが多すぎ、コストを把握するのが非常に困難です。まず、場所打ちコンクリート杭の経済設計手法を解説します。
場所打ちコンクリート杭の見積りを見てみましょう。これは私が今年、関わった3物件の見積を項目が比較しやすいようにまとめたものです。尚、通常、鉄筋・コンクリートの材料はゼネコンが提供するので、材料単価は杭施工業者が参考で入れたものです。また、これはグロス金額であり、ネット金額として、30%程度引かれたものが提示されています。実際の発注は更に値引きを行う事になります。
●場所打ちコンクリート杭の見積り例
杭の金額は何で決定してるかを把握するために各項目の比率の平均を以下に示します。
これを見ると一番高いのは材料費で38%を占めています。次は残土、泥水処分費の16.4%です。これらの数量の単位は ㎥:杭の体積であり、合わせて、54.4%になります。
その次は機械・資材損料、労務費となり、合わせて、27.9%です。単位は施工日数です。掘削数量(=杭の体積)が増えると施工日数も増える事になります。
これから分かる事は場所打ちコンクリート杭の金額は約70%が杭の体積に係わるものと言うことです。
杭本数が10%増え、杭の体積が10%減った場合を考えます。仮に機械資材・損料、労務費が杭の総長さに比例するとしても杭の体積が減れば、コストは下がる事になるのです。また、材料費(コンクリート、鉄筋)の価格は明確です。杭施工会社の思惑で金額の上下はできません。
上記より経済的に設計する方法は明確です。経済的な場所打ちコンクリート杭を設計する杭の体積を減らす事です。そのためには以下を行います。
以下に杭径、杭断面積A、杭周長ψ、断面係数Z、周長及び断面係数の断面積に対する比率の一覧を示します。
1400φと1000φ×2本、1700φと1200φ×2本は概ね同じ断面積です。断面積が同等なので先端支持力、コストが同等であると仮定します。周長、断面係数はどうかと言うと、周長は2本とした方が多くなり、断面係数は2本よりも同じ面積の1本の方が大きくなります。つまり、引抜力が支配的な場合は2本打ちとした場合の方が有利になるという事です。ただし、水平力に対しては弱くなってしまうので注意が必要です。
補足ですが、杭径を小さくすれば、小さな機械で施工が出来るので機械損料が安くなるとのメリットもあります。但し、これは杭施工業者の都合に左右されます。施工機械が現場で動いていても、会社に置いておいても、その会社としては損料が変わりません。杭、土工事の価格はこのような思惑で決まっているのです。