鉄骨造の構造計算で部材がNG又は余裕度が大きい場合、部材の上げ下げを行い、調整する訳ですが、梁に使用するH形鋼の種類には細幅、中幅、広幅があり、柱に使用する角形鋼管は外径と肉厚の組合せがあります。
更に鋼材の強度種別があります。
ここでは、経済的な部材の選定方法の解説を行います。
細幅H-450×200と中幅H-340×250を比較すると断面二次モーメント、断面係数ともに細幅であるH-450×200の方が大きい値となっています。では重量(コスト)はと言うとH-450×200の方が小さくなっています。
以下にH形鋼を重量順(コスト順)に並べます。
これによると中幅のH形鋼は重量(コスト)は上がっても、断面二次モーメント、断面係数は小さくなってしまいます。(灰色の部分)つまり、経済的な構造設計とするには梁は細幅H形鋼を選択するのが原則です。
H-488×300はH-600×200よりも断面係数が大きくなりますので、応力でNGの場合はH-588×300にするのではなく、H-488×300を検討しましょう。
中幅、広幅H形鋼は梁せいを抑えたい場合、耐風梁や柱のように強軸、弱軸の両方向に荷重を受ける場合、座屈に対して強くしたい場合に使う部材です。
H形鋼の鋼材表を見ると同じサイズに2種類、3種類の部材があります。JISのH形鋼は内法一定でロール成型され、同じサイズで肉厚の違うものがあります。裏サイズ、インチサイズと言われる材料です。
通常、使用するのは50mm刻みの寸法で作られた中央の材料(H-350×175、H-400×200)であり、上下の材料は「常時圧延しておりません。」と書かれています。大型の工事であればロール発注も可能ですが、そうでない場合は市中品(在庫品)を使用することになります。
在庫は鋼材メーカーがホームページで掲載していますが、青で囲った肉厚の小さい部材は通常、在庫があります。
この裏サイズを使用することで重量(コスト)を15%ほど下げる事が可能なので積極的に使用しましょう。
ただし、同じ工区で混在させると施工管理が煩雑になるので注意が必要です。
H形鋼の強度種別には400級と490級(SM490A、SN490)があります。強度は1.38倍、価格は1.03倍ですのでコスト的には効率が良い材料です。材工価格とすると更に差がなくなります。
応力で部材が決定している場合は積極的に使用しましょう。使用する部分は応力の大きい端部のみとし、中央部は同じサイズの400級とします。
ただし、490級の材料は常に市中品(在庫品)がある訳ではないので在庫の確認が必要です。
柱に使用する角形鋼管についても同様に重量(コスト)と断面性能の関係を見てみます。
同じ色で囲った部分を比較すると□-300×300×9は□-250×250×12よりも重量(コスト)が小さく、断面性能が大きい。(青色の部分)□-350×350×12は□-300×300×16よりも重量(コスト)が小さく、断面性能が大きい。(青色の部分)
□-350×350×22は肉厚が2サイズ小さい□-400×400×16よりも重量(コスト)が大きく、断面性能は小さい。
これから分かるように角形鋼管は肉厚を上げるよりも外径を上げた方が経済的であると言う事です。肉厚が22mm以上のものは更に効率が悪く、原則使用しないようします。
鉄骨造の部材選定において、各部材の応力に対する検討の他、大きく影響を与えるのは層間変形角です。層間変形角は柱、大梁のサイズにて決定し、層間変形角を満足するために部材の耐力をフルに使用できない事も多くあります。
部材の応力は全てOK、層間変形角がNGの場合、柱サイズを上げるべきか、大梁サイズを上げるべきか、また、両方か悩むところですが、層間変形角をOKにさせるためにはまず、柱サイズを上げる方が経済的です。
部材の剛性は断面性能モーメントと部材長で決まりますが、通常、柱は梁よりも部材長が短いため、柱サイズを上げる方が効果的です。また、数量も大梁よりも柱の方が少ないので多い部分よりも少ない部分を上げる方が経済的です。