鉄骨造においては柱、梁の鉄骨部材だけでなく、各種の工業化、省力化工法があります。この工法の使用方法んついて、経済性の観点から解説します。
デッキスラブは構造耐力ではなく、耐火条件で仕様が決まってしまいます。以下、代表的なデッキの仕様、コストを示します。
まずはデッキの性能が発揮できるスパン割りを行うのが基本です。2時間耐火の場合は2種類の仕様が選択可能であり、価格の差は約1,300円/㎡であり、許容スパンはそれぞれ2.7m、3.4mです。 許容スパンが小さくなると小梁本数が増える可能性がありますが、どちらが経済的かを検討するために負担面積当たりの梁の金額を以下に算出します。
これから分かるように、どのサイズも負担幅2.7mと3.4とmの差額は1,300円/㎡以下ですので小梁を増やしてもデッキの仕様を下げた方が経済的です。
尚、日鉄建材のEデッキEco60(1時間耐火、許容スパン2.5m)もスパン割りによっては有効です。
前章にて、経済的な梁部材の選定方法の解説をしましたが、梁部材の設定にあたっては仕口部の納まりを考慮しないとなりません。梁フランジが取り付く部分にはダイアフラムが必要であり、柱に取り付く梁のサイズが違う場合、100mm以上の段差がないと溶接が出来ないためです。
この仕口部の納まり検討から、解放され、応力で最小限の部材が決定できるノンダイアフラム柱梁仕口部工法として、NDコア(日鉄建材)、ファブラックスG(旭化成建材)があります。
このノンダイアフラム工法について、コスト面から検証してみます。
上図の建物において、応力から決定される部材は、G1:H-450×200、G2:H-400×200となり、梁段差は5cmのため、仕口部が納まりません。この際の対応としては以下の3通りがあり、それぞれ、差額を示します。尚、柱は□-300×300×16とします。
このようにノンダイアフラム工法を使用するのはコスト的には不利になります。NDコアの材料価格は1m当たり75,600円(285,283円/t)と角形鋼管の3倍程度になります。G3の部材を変えたとしても、まだ、有利です。G4まで変えるとしたら、逆にG1の部材を変えた方が有利です。
(コスト試算)
「ノンダイアフラム工法を使用すれば経済的な梁設計が出来、コストが下がります。」と言うのは全くの間違いです。悪い言い方をすれば、柱梁仕口部の納まり検討を省略している手抜き設計です。
柱梁仕口部の納まりを考え、集まる梁の応力が等しくなるように又はどちらかに荷重を集中させ、梁段差を作る架構計画を行うのが構造経済設計の腕の見せ所なのです。
前章にて、経済的な柱部材の選定方法について、「柱の角形鋼管は肉厚を上げるより、外径を上げた方が経済的である。」と解説をしましたが、応力伝達を考えると各階で柱外径を変えることは出来ず、肉厚にて調整することになります。
柱の絞りを可能にするテーパーコア(日鉄建材)やファブラックスDS(旭化成建材)もありますが、中高層にならないとコスト的には不利になります。
旭化成建材のファブラックスDSの価格は58,600円/個(DS40)です。この価格を階高の柱の単位重量にすると約120kg/mになります。□-300×300×16で単位重量は175.2kg/mです。120kg/m分としたら、かなり部材サイズを上げてもコストは逆転しません。
では多層の建物の柱外径をどのように決めるかですが、1階で肉厚16mmもしくは19mmで外径を決め、上階の肉厚を絞る方法とします。階の半分以上で最低肉厚のサイズとなってしまう場合は
1階で22mm以上の肉厚を使用し、柱外径を絞ります。