RC造の構造経済設計〜配筋の増やし方

令和3年3月14日公開

P投げ銭!



 次に簡単なRC造の構造経済設計手法は「配筋の増やし方」です。
 RC部材の断面設計では検定比を見ながら、配筋を増やしいく訳ですが、配筋は鉄筋径、種別、ピッチ、本数の組合せで決定します。この組合せは無数にある訳ではなく、使用するものは限られています。この配筋の増やし方を気を付ければ、50万円以上のコストダウン効果があります。



【Contents】
  1. 建築構造の経済設計
  2. 経済設計の基本
  3. RC造の構造経済設計
  4. 鉄骨造の構造経済設計
  5. 基礎の構造経済設計
  6. 使える構造VE、コストダウン案 50選

スラブ配筋の増やし方

 スラブ配筋を決定するにあたり、最も影響が大きいのは主筋(短辺)方向の上端筋です。下端筋は存在応力に対してではなく、施工性のために上端筋とは同じピッチか倍ピッチとすることで決定されている事が多いと思います。

 以下にスラブ配筋の上端筋と下端筋との組合せ、鉄筋量、1㎡の金額の一覧を上端筋の引張鉄筋量順に示します。尚、複筋比は0.40%以上となるようにしています。

 ※鉄筋材工単価:\121,000円/t

 上の表の順番で配筋を増やしていくと経済的なスラブの設計が出来ます。主筋方向は施工時のスラブ筋の乱れ防止のためにD10,D13@200からスタートして下さい。灰色の部分は基本使用しません。
 ポイントとしては以下になります。


 例えば、上端筋がD13@100となる場合、下端筋をD13で倍ピッチ、D10で同ピッチが考えられますが、D13で倍ピッチの方がコスト的に有利になります。
 また、上端筋を125ピッチ、下端筋を倍の250ピッチとする組合せも使用しましょう。施工時にスラブの上を歩く時は主筋方向上端筋の上に乗るのが現場の基本です。下端筋はスラブ筋の施工時の乱れには影響しません。

 D10,D13@100の配筋は下端筋との組合せを考えると上端筋をもう1ランク上げてしまった方が経済的になります。
 また、通常はD13@200で足りないとD13@150に上げるかと思いますが、鉄筋量ではその間にD10,D13@150があります。D13@150とは175円/㎡の差がありますので積極的に使用しましょう。配筋の手間が気になりますが、D10,D13@200は普通に行いますのでそれほど手間は増えません。鉄筋屋さんも慣れたものです。

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スターラップの増やし方

 梁スターラップは通常、200ピッチ、150ピッチ、125ピッチ、100ピッチと増やし、100ピッチで足りない場合は3-D13@100、4-D13@100と中子筋を増やしていく方が多いと思います。

 ここでスターラップの加工形状を見てみましょう。

 せん断補強として機能するのは縦方向の鉄筋です。(青色の部分)上下の横方向の鉄筋(赤色)は閉鎖型とするためで、せん断補強として機能しない部分になりますが、スターラップのピッチを増やすと機能しない部分の鉄筋量が増えます。一方、中子筋は全てが機能する鉄筋です。

 以下にスターラップの組合せとせん断補強筋量(c㎡)、1m当りの金額を示します。金額は梁断面を 550×800、地中梁を想定した550×2000で比較しました。

【梁スターラップ配筋とコスト】

 せん断補強筋量としては、2-D13@100、3-D13@150、4-D13@100は同じ25.40c㎡です。しかし、上下部分の鉄筋量の差があるのでコスト的には4-D13@100が一番有利になり、2-D13@100とは1m当り、472円の差が出ます。

 コスト比較例の建物でX方向の梁に対して、試算すると約20万円の差が出る事になります。

 以上をまとめると上記表の灰色の部分を除いて、順番に増やしていくと経済的な梁スターラップの選定が出来ます。尚、梁せいが大きくなり、幅とせいの比が2倍以上となると逆転する部分がありますので注意して下さい。

(コスト試算)

  • 2-D13@100:121,000(円/t)×2.536(m)×0.995(kg/m)×10本 = 3,053 円/m
  • 4-D13@200:121,000(円/t)×4.288(m)×0.995(kg/m)× 5本 = 2,581 円/m
  • 差額  :(3,053-2,581)円/m× 6.2m×12本×6層 = 210,678 円



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柱、梁主筋の増やし方

 柱、梁の主筋は通常、D22~D32を使用し、D25以下はSD345、D29以上はSD390を使用します。この使い分けについて説明します。

 材料単価はSD345:74,000円/t、SD390:76,000円です。価格の差は1.03倍(76000/74000)、強度の差は1.13倍(390/345)ですのでコストの上昇分以上に強度が上昇し、SD390はSD345よりもコスト的には有利な材料です。そして、同じ梁幅であれば径の大きい鉄筋の方が大きな耐力が取れます。

では、SD390のD32を使うのが経済的かと言うとそんな単純ではありません。

 まず、1本あたりの強度が大きくなるので、部材耐力を細かく調整する事が出来なくなります。また、大きな耐力を必要としない中央部でも強度の大きい鉄筋を使用することになります。定着長も長くなります。圧接のコストも関わります。


 以下に鉄筋径、本数、コストのシミュレーションをしました。
 梁主筋の決定に当たり、支配的になる端部上端筋を基準に鉄筋の最低本数は4本、中央上端筋は端部の60%、端部下端は上端の80%、中央下端筋は端部の60%かつ上端筋本数以上としました。

 これによると以下とする事が経済的には効率が良い事が分かります。

 6-D22と4-D25を比較すると耐力、コスト共D22の方が効率が良くなっています。(青色で囲った部分)以降はD22で本数を増やすより、D25を使用した方が経済的であるとの結果です。
 7-D25と5-D29を比較すると耐力、コスト共D29の方が効率が良くなっています。(緑色で囲った部分)以降は同じ梁幅であれば細かく調整できるD29の方が経済的です。同じ梁幅であれば、D32の方が 耐力を上げる事が出来ますのでD29で納まらなくなったら、D32を使用する事が効率的です。
 7本にするのであれば、1ランク上の径を使用すると覚えれば簡単です。

   コスト比較例の建物でX方向の梁に対して、試算します。梁主筋を全て、D25とした場合とD29とした場合を考えると、25万円ほどコストが変わります。

(コスト試算)

  • R、6F(7-D25と5-D29):(44,302円-44,299円)×12本×2層 = 72 円
  • 5、4F(9-D25と6-D29):(58,316円-50,261円)×12本×2層 = 193,320 円
  • 3、2F(10-D25と7-D29):(60,574円-58,407円)×12本×2層 = 52,008 円
  • 合計:245,400円



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高強度せん断補強筋の使用

 柱や大梁のせん断補強に高強度せん断補強筋(KSS785等)を使用する事は良くある事と思いますが、材料単価は210,000円/tとSD295A(73,000円/t)に対し、3倍近くの金額となります。材工ではそれぞれ、258,000円/t、121,000円/tです。

 価格比2.13倍に対し、材料強度の比は2倍(590/295)となります。高強度せん断補強筋を使用すれば鉄筋量が減ることを考えれば、それほど効率の悪い材料ではありません。

 以下に高強度フープを使用した場合とSD295Aを使用した場合の柱の短期許容せん断耐力、金額の比較を示します。

 ケース①は方方向が耐震壁付きとなる場合、ケース②は両方向がラーメンフレームとなる場合を想定しています。これによるとケース①では1.3倍ほど、コストが上がりますが、ケース②では概ね同じです。
 ケース①でコストが上がる原因は不要な耐震壁方向に対しても、高強度せん断補強筋となってしまうためです。基本的にはSD295Aで本数を増やし対応できるなら、無理に高強度せん断補強筋を使用する必要もありませんが、柱を大きくしなければならない、コンクリート強度を上げないとならないとの場合であれば、高強度せん断補強筋を使用しましょう。


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まとめ

  • スラブ配筋は125ピッチ、下端筋は上端筋の倍ピッチの組合せを使用する
  • 梁スターラップはピッチを増やす前に中子筋を増やす
  • 梁主筋は本数が7本になったら、1ランク上の鉄筋径を使用する
  • 高強度せん断補強筋はそれほど効率が悪い材料ではない。





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