鉄筋コンクリート造の各部材は日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準(RC規準)」で最低配筋が定められています。存在応力では決定せず、最低配筋で鉄筋量が決まることも多くあります。この“最低配筋、計算外配筋”を本当の必要最低限の配筋とせず、なんとなく決めていませんか?各部材の最低配筋を見直してみましょう。
これだけで軽く100万円以上のコストダウンが出来ます。
RC規準では壁のせん断補強筋比 Pw=0.25%以上となっています。D10@250ダブル配筋で壁厚150mmの場合は Pw=0.379%、壁厚200mmでも Pw=0.284%となります。
なんとなく、D10@200ダブル配筋としたり、壁厚が上がるにつれ、配筋を増やしていないでしょうか、以下に各配筋の金額の一覧を示します。
壁配筋 | コスト (円/㎡) |
D10@250ダブル | 1,084 |
D10@200ダブル | 1,355 |
D10@150ダブル | 1,807 |
D13@200ダブル | 2,408 |
※鉄筋材工単価:\121,000円/t
D10@250に対してのコストはD10@200は271円/㎡、D10@150は723円/㎡、D13@200は1,324円/㎡変わります。
コスト比較例の建物でY方向を全て、耐震壁とした場合、D10@250とD10@200では38万円の差が出る事になります。
(コスト試算)
梁主筋については柱梁接合部の検討や保有水平耐力検討の崩壊形に影響するので不要に増やす人は少ないでしょう。また、最低配筋で決まる事も少ないですが、計算外で決定する耐震壁付き梁に着目しましょう。
RC規準では梁の主筋量は主筋0.80%以上となっています。耐震壁付き梁の場合は計算外で決定することになりますが何となくで決めていないでしょうか。
3-D19と3-D22では、1m当り578円/m、3-D19と3-D25では1,266円/m、3-D22と3-D25では688円/mの差が出ます。
尚、3-D19で不足する場合に3-D22ではなく、4-D19とすると鉄筋量は減りますが、圧節数が増える事で金額は逆転してしまいますので注意が必要です。
コスト比較例の建物で比較してみますとD19とD22では27万円、D19とD25では59万円の差が出ることになります。
(コスト試算)
次にスターラップについて、考えましょう。以下に梁幅とスターラップ配筋、Pw、コストについてまとめます。※コストは梁せいが600mmの場合を示しています。
D10@200で足りるものをなんとなく、D10@150とすると1m当り103円、D13@200とすると261円の差が出ます。
建物全体では47,479円、120,656円の差になります。少ないように思えますが、性能の差は出ない部分なので、このコストには拘るべきです。経済設計とするには積み重ねが重要です。
尚、梁幅400mm以上となるとD10@200ではPwが0.20%を下回るため、配筋を上げなければなりませんが、D13を使用するよりもD10でピッチを細かくした方がコスト的には有利です。
次にスラブの配力筋を考えてみましょう。
片持ちスラブや一方向版スラブ以外の配力筋は計算外ではありませんが、最低配筋をD10@200としている会社、設計者も居ると思います。理由はと聞くと「D10@250では施工時に鉄筋が乱れてしまう。
だから、最低でもD10@200とする必要がある。」との回答ですが、本当にそうでしょうか?
コンクリート打設時などにスラブ筋の上を歩く時の乱れを気にしているのだと思いますが、現場では外側の鉄筋(主筋)の上を歩くのが基本です。また、乱れ防止のためのメッシュも敷いてあります。
配力筋はスラブ筋の施工時の乱れには影響しません。
配力筋がD10@200とD10@250の差は136円/㎡になります。コスト比較例の建物で計算すると58万円の差が出ます。
(コスト試算)
どうです。鉄筋の乱れ防止は現場に任せませんか?現場に「どちらが良いですか?」と聞けば、間違いなく、D10@250を選択します。
他にもある計算外で配筋を決定する部分はあります。偏心の無い1本打ち杭基礎のベース筋、はかま筋。非耐力壁の開口補強筋。
これらを見直すだけで百数十万円のコストダウンが出来るのです。最低配筋を考えるのも根拠を持って設計するという事になります。これらは個別に検討するとの事ではなく、
決めておけば良いだけなので是非、実施しましょう。